ある日のこと

午後、電話をとる。何分かわからないけど話す。電話を切る。別の人にかける。何分かわからないけど話す。夢中で。めちゃくちゃ夢中で。1つだけ頭の中で分かっていることがある。もうやろうとしていることは今は無理なんだということ。

進めていたものをキャンセルする。キャンセル料のことを言われる。仕方ない。いろんなひとに謝りの連絡を入れる。親に連絡する。1度は失業保険のことを考える。バイトをすることを考える。頭を回転させる。

また電話をする。何分かわからないけど話す。仕事を辞めることを決める。金がほしい。フルリモートの別の仕事を探すことにする。エージェントに3年振りに連絡する。エージェントと面談の予定を組む。

みんなに謝る。みんな優しいから怒らなかったし、次のことを話してくれたりした。内心はどう思っていたんだろう。

初めて自分でやりたいことをやって、うまくいかなくて悔しいって思った気がした。普通の人はもっと前に経験してるのかもしれない。それくらいやりたいことなんて今までなかったから。

 

電話で「お祭りに参加してるみたいでした」って言われて、泣きそうだった。「来年いつやるんすか」って言われて、やっぱり泣きそうだった。

 

そんな日。

2023年9月

前は毎日ちょっとずつ書いていたのを、最後に振り返って気持ち悪いとこ直して終わりにしてたけど、ここ数ヶ月はそれができないことを理由にやめてた。別にそんな決まりはそもそもないので、結局は忙しいとかを理由に書かなくなっただけなのだけれど。なので、抜け落ちている日も多々ある。そもそもは記憶の中にはあるので、別にいいんだけど。あと、今月から出てくる人の書き方変えました。なんとなく。

 

仕事が忙しい。というか、次々と理不尽とは言えないが、そこまでやるか?という微妙なラインに襲われ続けて、元来の気の小ささにより、全てに対して向き合うことで対処はし続けているものの、全てが破綻の手前のようなことを永遠に繰り返している。スーパープレイヤーでもない、ましてやスーパーマネージャーでもない人間が、月が変わったらまた役職が変わるというのは、本当に良いのだろうかという疑問は未だ拭えない。

結局のところ、そういった組織の論理のような「政治」への憂鬱と無限に増え続ける残業からの離脱を試みて転職したはずなのに、行き着いた先は同じところで、資本主義の構造からは逃れられないことを身をもって体験する。

 

そういうわけで、ここ数ヶ月いろんな大人を動かし、KSMN君言うところの「歌舞伎」の準備をしている。それもまた日記を書いていない理由の1つになっている。そちらでやらなければいけないことがなかなか片付かず、やっと建物が決まったのが先月末で、融資申請のための準備に今もなお追われている。何もそこまでしなくてもと思う気持ちがある一方で、こうでもせんと社会を新しい見え方で見ることはもうできないという諦めにも似たような気持ちと、どうせなら1回くらい興味ないもんなんかじゃなくて、興味あるもんに関することを自分でやりたいという、キッザニアでやっとけや的な動機もなくはないわけではないものの、本当にキッザニアで終わるやつもいれば、マジで各所のプロを呼んで金払うやつとの間には到底計り知れない距離があり、そこはもう後者に踏み切ったので、こうなるなら金をためておけばよかったと本当にそれだけをただ後悔している。

具体的な話が書けるレベルにいまだ到達していないため、今月はここまでにはなるが、どのみち来月になれば然るべき機関に頭を下げた審査のもとに結果が明らかになる。そこで丁か半か出たものをただ受け入れることしかできないので、少しでも博打に勝つための方法(幸いにしてこれは神頼み以外のこともできるタイプの博打である)をひたすらにし続けるしかない。だめだった時、自分は人生をどこに転がすつもりなのかもまだ決まっていないのはもちろん、ここまで一緒にやってくれた大人たち、チームの人達にどんな顔でどんな文章を送る事ができるだろうかと思うと、寝る前に吐き気がする。

 

「吉村弘 風景の音 音の風景」を神奈川県立近代美術館 鎌倉別館に見に行く。遠すぎて途中で勘弁してくれやと思いつつ、行ったら鎌倉のいわゆる観光地からは少し離れていて居心地が良かった。展示内容も自作の楽器などに触れたり、独特の楽譜の数々などは、楽譜が読めずとも音楽が好きでいっちょ前にDTMとか言ってるやつには優しい環境で個人的には非常に良かった。吉村弘の音楽が流れているというのがまずそもそも良い。ああやってレコードジャケットを並べられると、サブスクで聞くだけじゃあなあという気持ちにもならないわけではない。

 

歯医者。前回何故かめちゃくちゃキレイで出血箇所も少ないと褒められたが、本人に原因がわかっていないのだから、当然今回は無難な結果になっていた。なんかちょっとがっかりされるのもよくわからないのだが、良かった原因がわからない限りこれは永遠に繰り返される。かといって原因を聞いても、歯磨きが良かったと言われるくらいだろうと思うと、自覚なく過ごす日常の何たる無為さを思い知る。次回の予約は3ヶ月後でと言われ、その頃自分はどうなっているんだろうとふと思いながら、はいと無意識に返事をしていた。

歯医者終わりはフジ・コミュニケーションと決まっているが、まだ微妙に空いておらず、かもめブックスで徳谷柿次郎「おまえの俺をおしえてくれ」、山本梓「プンニャラペン」、「FEU No.1」を購入。やたら店の中で光って見えた本を買った。その後は予定通りフジ・コミュニケーションで昼食。なんか隣のカップルの会話が耳に入って、勝手な思い込みが頭をよぎり、ちょっと良くないなあと反省。

 

anicoremixgalleryにて、グループ展「Advanced Obsession」を見る。場所がわからず原宿の真ん中でやや迷子になりながらたどり着いた。特にももえ氏の作品が印象的に残っている。絵を引き裂いたように見えて、それはそもそも「絵」なのか、デジタルなデータの粒子なのか、はたまた実物なのかみたいなことの境目を行き来している感じが楽しい。顔が引き裂かれている大きな作品もそうだし、絵の下に実際の三つ編みが伸びている作品もそう。もっとたくさん見たかった。

散髪。散髪時は創業云々について、いい意味で「他人」の関係なのでお互いある種適当言ってもよいことから、結構話が弾んでしまう。他人が本屋をどう見ているのか、本ってどのくらいに位置しているのかなどがわかるのはありがたい。接客業のプロの考え方みたいなものも髄所に見えてくるところもちょっとおもしろい。普段はそういう会話をしないような美容師がそういう話をしているのも、それもまた自分に対して合わせたプロの接客なわけで、話半分で聞くのがちょうどいいかと思える理由でもある。

 

MTG。日曜の21時に固定化されつつある。個人的にはいいんだけど、みんな申し訳ないなと思うのは、乗ってくると話が長くなり、まくしたてることで、要点以外は早く終わってほしいとおもってるよなと終わった後に考える。一方で、終わると刺激が強いのか何かしらのやる気と翌日の仕事への無力感とでよくわからない気持ちになっている。これが基本的に毎週続く。ロゴがあがってきて、いよいよ本気でやってる感が出てくる。プロの仕事は素人にはほとんどわからないので、「お願いします」といったものの、この微細な修正にもプロのこだわりとプライドが混ざっていると思うと、自分の正しい態度とは何なのか、金を払っている立場として正しい振る舞いをもっとしたい。お願いしたくてしていて、満足していますよ。というところをもっと口に出さなければいけなくて、そしてそれを言葉だけでなく報酬で見せる。結局はそこだよなと思ったりしながら眠りにつく。

 

ちょっと前に打診したマーチャンダイジングについて、KSMN氏が受けてくれそうで一安心する。彼より信頼できる人が周りにおらず、ただただ自分にとっては嬉しい限りで、絶対により多くの金を生み出したいという気持ちを新たにする。しかし、フリーで仕事を受ける人と実際に自分が契約するなどをやってこず、ひたすら会社に守られていた人間としては、KSMN氏に限らず、これほどまでに同世代のフリーの人らがしっかりしているということを知ると、自分の何も身についてなさが痛々しい。契約書関連など、いろいろやりとりを進める中で特に思うところあり、何様で依頼やら契約やらしてんねんと思うが、もう頭を下げて金を払うしかできることがない地点まで時間は進んでしまっており、餅は餅屋で言われた金額、もしくは精一杯の金を払って、とにかく気持ちよくやってもらうことしか自分にはできないと割り切ることにする。

 

9日に設計担当いただいているOSK氏も含めて会食ができるということで、OSK氏、KT氏、ISKW氏と初めてそろって対面で食事。皆気のいい若者という感じで、いいチームに恵まれているという事実にただただ申し訳なさと自分の運の良さへの何かへの感謝のみを感じながら食事・飲酒を楽しむ。せっかくの機会ということもあり、各々に向けてzineを持って行き渡したところ、かなり良い反応をもらえて、嬉しかった。仮にこの分野に「プロ」がいるとするならば、もしかするとこういうことを類型化したり感覚でやれるのかもしれないが、自分にはそれができないということだけがやってみてわかった。できるだけその人のライフスタイルや考えていることなんかを思い浮かべること、何かを押し付ける形にならないようなことを考えていた気はするが、「当て感」みたいなもので矮小化したり、これをすればできるのようなメソッドにするのではなく、自分の中での形を作る必要があるように思った。あとは、当たり前ながらあくまでも相手は人間であるということを忘れないこと。そこさえ間違えなければ、変な外し方はしない気がした。まだよくわからないけど。

その後、流れでKT氏、OSK氏の大学時代の友人の飲み会にもお邪魔させていただくことに。こちらは正直遠慮する方が良かったと少し反省。楽しくなかったとかではなく、むしろ知らんことがわかってありがたかったけど、そういう次元ではない場所だったはずのところに、部外者が行くのは違うよな、酒の勢いも考えものだなと30を超えてもまだわかっていないことがあることに気づく。「場」というのは、何かしらの目的が設定されている場合と、されていない場合があるが、重要なのはその場の全員がその場の目的を共通のものにしているかどうか、目的があるなら「目的の内容」、目的がないなら「ないということ」だと思うが、それを乱した気がした。世の中にはまだいろんな会ったことのない頭のいい人、自分が考えたこともないことを考えている人がいるというのを分かったのはすごく良かったけれど、それは本当は自分が対価を払って得るべき場だったわけで、ましてそれは申し訳で相手のバッグに滑り込ませた1000円ではとても足りないものなのである。

帰路にて、今後ここにいるような「言葉」を巧みに扱える人以外をイメージして動かなければならないようなことをぼんやりと思う。幸いにも恵まれて、4大卒の「エリート」として扱われるような人間は、自分も含めてわかったような顔をして「言葉」で何かを制圧する、完結させるようなところがある。そのおもしろさはわかっているつもりであるが、それだけがおもしろいものなどでは到底なく、ましてそれは別に偉い・尊いものではないということを自分がわかっているのか。しゃべりすぎると時折そういうことを無性に考えてしまう。言葉にうまくできない人の気持ちをわかることは無理かもしれないが、そういう人がいて、そういう人とも生きていくということだけ覚えていることくらいしかできないかもしれないけど。

1つだけ、自分の知り合いではPairsが結構いい仕事をしているようだということがわかった。2例目ではあるが、ああいうものを使って良い人間関係を構築できるみなさまとそのサービス提供者への敬意をないがしろにしたくないという気持ちに。そして、周囲にいい縁が生まれているならば、できるだけいい形で動き続けていてほしいと、そういう話を身近で聞くといつも思う。

 

zine.xに行ってzineをいくつか購入。zineを人に勝手に渡したと思えば、翌日にはたくさんのzineを買っている。何をしたいのか自分でもよくわからないまま、身体が動いている。小野寺伝助「クソみたいな世界を生き抜くためのパンク的読書」「クソみたいな世界で抗うためのパンク的読書」、Summersail「HOME GROUND CINEMA」「BACK GROUND CINEMA GUIDE BOOK」「ON-GROUND CINEMA」、chai「A to Z about ART」、辻本達也「neoコーキョー 02」、小瀬古智之「半架空の知覚法」、すなば「マッチングシンドローム」、Yum Store「Welcome to India」を購入。どれも読むのは少し先になりそうだけど、おもしろそうで満足。

 

マジで見かけただけだし、マジになる必要はまったくないものの、カレールーのパッケージのブックカバーみたいなもんをおもろいと思ってる奴らを一回一掃したいと思ってるのおれだけ?となったり。

 

これも見かけただけだけど、軍艦仁のツイート見て、ツッコミ不在のきわどめのボケって文章では大変そうだなあと思った。いや、ほんとに思ってんならボケおもんないで終わるだけだからそれはそれでいいけど。

こういう見かけただけのことはツイートに書かずに日記に書くことを忘れないようにしようと思い直した。

 

病院。採血あり。特に体調に変化なし。いつも通り抗不安薬睡眠薬をもらう。睡眠薬は効きすぎている感じがあって、使用頻度を抑えることにする。

 

会社の人から「限界なので」ということで食事に誘われる。もともと誘われていた人も混ぜて合計4人で焼肉。各々決まっていること/決まっていないこと、言えること/言えないことの微妙なせめぎあいも感じつつ、上司や仕事への愚痴、あれはないだろなどなど積もる話や下らん話もあって、総じていい会だったのではないか。しかし、このタイミングで社内コミュニケーションを円滑化させてしまう自分わけわからんし、よくないなと思ったり思わなかったり。1人の人には、以前の飲み会以降に「辞めるときは事前に言ってくれ」と言われて、「わかりました」と言っていたので、考えてることを話す。申し訳ないし、本当は言わない方がいいよなと心の中でわかっているが、約束してしまったので、言わないのは自分が許さないので、洗いざらい話した。代わりなのか何なのかわからないけど、1つ秘密を教えてくれた。この人すごいってまた尊敬した。

 

tata bookshopに初めて行く。以前大阪のcolombo cornershopに行った際に、店主の方が「この人がやることはおもろいから注目しとけ」と言われたのを覚えていて、その方が宣伝していた「Silvergelatin EXHIBITION」を見るために行った。tata bookshopでは、古本で「増田正デザイン研究所作品集」、「80年代美術100のかたち」を購入。展示はマルジェラのインビテーションカードがあって、ちょっとほしかったけど、値段的には今は手が出ずあきらめる。

 

創業動機がやはりどうもしっくり来ておらず、YSD氏に見てもらうと、辛辣なご意見。しかしまあ、関係性もあって、的を射ているというか、ごもっともなことをそのまま言われた感じ。本当にやりたいことはなんやねんという話で、そこに立ち返って全面的に書き直しアジ文と化したものを見て、これが俺かと気づく。ここまで言わんと俺じゃないよなあという気持ちと、マジで生まれた時代によってはゲバ棒振り回してたろうなと一瞬で想像可能だった。

 

先週ISKW氏にいただいた作品がいいなと思い飾っていたが、ポスターにできないのかなどという面倒を言い出す。言い出してから、もう少し言い方とか考え方とかあったよなと反省。そんなことより覚書案作成しろよと自分に喝を入れ、武蔵境の上島珈琲店で作業。

 

数年に1度しか動かない大学自体のゼミのLINEグループに「子供ができた」というメッセージが流れてめちゃくちゃテンションが上がって祝福。こういうものには素直に喜んで、祝福していくことくらいしか、今からそんなこととは真逆のことをやろうとしている人間にできることはなく、実際にとってもめでたい話で、同い年でそんな次元に進んでいる人もいて、みんなひたすらに偉いと思う。かたや自分はとか言い出すとキリがないので考えないようにしているが、あの頃もう少し大人だったらあのまま結婚していたのだろうかというような、あったかもしれない未来のことを一瞬考えて、忘れた。

 

仕事がバカ忙しくなり、提出資料の修正と完全に丸被りして土日しかタスクができなくなる。おまけにラジ父イベントのチケット当選を無駄にして気分最悪。

とはいえ、この状態はよくない。このまま自分が死んだらマジで意味ないので、そこは完全に振り切ってやることに切り替える。武蔵境の上島珈琲店にならおれはいくらお金を落としてもいい気持ちになりながら基本的には土日はそこで作業。

 

中途半端にしていたJersey Club関連の書き起こしをアップロード。別に誰かに具体的に反応されるなどはなかったが、普段よりは見られたような感じもあり、人を呼びつけてまで収録した甲斐はあったようななかったような。何より音楽聞きながら音楽の話するの楽しすぎるので、もっとやりたい。

自分が思っていることは、それなら別に名前が人でも作れると思うんで、そっちに仕事振って新しいものを作ろうという気概がある業界人は実はいないのではということで、そういうものに対する不満と、かといってインターネットから売れてきたスターを我先にと食い物にするのもキモい風潮だなと思っており、どの時点から唾つけるかみたいなことではあるものの、もうちょいその気があるなら、現場来てプレイを見るとか、インターネットちまちまチェックするとかしろやという気持ちがあの記事には出ている気がする。

 

りんご音楽祭の謎文ごときが「すてーとめんと」だというならそんなもん出すな。しょーもないんじゃ、カス。とまで書いて下書きに入れた。

それ関係で言えば、Batsu氏とかのツイート見て思うのは、おれはいいDJの話もクソみたいな性加害DJの話も同じくらいすればとしか思わず、みんな同じくらい前者もしたいのに後者が邪魔してんのと違います?という気持ちであり、現場レベルでどうなってるかはしらんけど、知ってる人は知ってる、知らない人は知らないでなんとなく流れていっていて、それが良いのかどうなのかは法律的な問題もあるからマジで答えがわからんのであまり触れないようにしているが、イベント主催とかが何も言わずに起用してるのは普通に気持ちが悪い。

更に言えば、過去のロスディケ録音転がってたので聞いて思い出したけど、貴様が犯罪の疑いのある行為をしたことにより、こっちはSugar's Campaignの新曲を聞く可能性消されてるんやぞ、それも含めて何してんねんってのは改めて思いました。

 

東京都美術館で「うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展」を鑑賞。おもしろかった。思わず図録を購入。エッチングの作品にはかわいさと不穏さがあり、どれを見てもおもしろい。「ガイコツの更新」なんかとってもかわいい。作者がメキシコシティの貧困地域で見た、電柱から線を引いて電気を盗んでくる風景をもとに作られた「詩的な混沌」は、生きるための知恵みたいなものと、どういうわけかそれが行ったことはないけれどきっとものすごく美しく見えるのだろうということが伝わってくるもので、「リアル」と言ってしまえばそれまでなのかもしれないけれど、でもそれでしか作れない作品のようにも思えた。

「うち」という参加型の作品もおもしろかった。100の小さな家に鍵がかかっていて、自由に開けて中を見ることができる。開けたいえを見ているときに「何を感じますか」と聞かれて、言葉にするのが難しかったけど、たまにこんなやりとりもいいなと思った。対照的に「見えない」という作品の「見えなさ」のインパクト。当たり前だけど、見えない場所が見えない。そしてそれがやたらと怖く感じる。あれが実際に覆っていたものはなんだったのか、今もそれらは自分たちの世界を覆っているのか、そんなことを考える。サーカスモチーフの作品がめちゃくちゃかわいかった。特に「玉けり」がお気に入りです。図録の下巻は12月下旬に届くらしく、早くも楽しみ。

 

その後、銀座の伊東屋でてらおかなつみ氏の個展を見る。売れっ子なので作品はすでに全て売れていたけど、かわいい犬のイラストは何度見てもいい。同じような絵を描いている人も最近は見かけるけど、てらおかさんのほどよい現実感とデフォルメ感が好き。しゃべらせたりしないところも、やりたいことが固まっている感じがして、静かな信念のようなものを思わせる。

 

さらに移動して中目黒のdessinにて坂内拓氏の展覧会「焦点」を見る。こちらもすばらしい。ポスターを買おうか迷ってやめてしまい、後から後悔。どれもいい作品で、見るたびに感じることが変わる作家さんだなと思う。遠くの景色だったり、めちゃくちゃ近くのものだったり、どちらにもいいところがあって、切り取っている瞬間のようなものに、ちょっとした哀しさというか、言葉にしにくい部分が必ず含まれているように思うのもなんかいい。dessinには初めて行ったけど、めっちゃ欲しい古本を見つけて逡巡。今日はあきらめようと決断。時期が来たら絶対に来るので、それまで頼むから待っていてくれと心の中で語りかけるような気持ちで、「アジアンタイポグラフィ&ロゴ NEXT
マルチリンガルなデザインアイデア」のみを購入し、店を後にする。

 

dessinからの帰り道、中目黒駅のホームでTwitterを見ていると、Lost Decadeの文字。緊急で茶箱で40名限定。フォームにアクセスするとまだ空いている。思い切って申し込むかという気持ちと、このあと定例MTGあるぞという気持ちが交錯し、後者が勝って間違いを犯さずに済んだ。幸いにして配信があり、okadada氏のどうしちゃいそうな繋ぎで完全にデカい声を1人で出してしまった。死ぬ前にもう一回現場でロスディケ見たい。そんなものは本当はないのかもしれないけれど、ロスディケにしかないもんがあるのですよね。僕にとっては。

その後の定例MTGはつつがなく終了。これで良かったのだと改めて思う。

 

前にもあったと思うが、改めて発注者として金を決まった日に払う緊張感というのはやはりある。随分前に予約していたものの、本当に振り込まれていたかを確認してしまった。1度やってしまえば慣れてくるし、作業にさえなるかもしれないが、とはいえこれは何に金を払っているのか、金を払うときに何を思って払うつもりで依頼するのかというようなことは都度考える必要もあるようにも思う。

 

KSMN氏に誘ってもらい、東京郊外にある、デザインを持ち込むと自分でシルクスクリーン制作ができる店に行く。ついでにいろいろな服のボディやら制作対象にできる品物などを確認。バッグの適切なサイズに気付いたことが最大の収穫。Tシャツを刷りまくるKSMN氏を見ながら、自分にはできんなあというのと、前日に持ってきたデザインの秀逸さに感心する。トートバッグとTシャツはその場で買わせてもらって帰路へ。何がどうやってできているのかをわからぬまま手に入る恩恵を受けまくる中で、たまには工程とか作業とかそういうもんがリアルに分かる、目の前で繰り広げられる空間に身を置くこともいいなと思った。自分には不器用すぎてできないけど。

 

KSMN氏と別れたあとで忘日舎の古本セールへ。店内なかなかのものも、値下げしていてこちらとしてはかなりありがたい。古い「STUDIO VOICE」、朝日新聞社「戦後文化の軌跡 1945-1995」、デイヴィッド・マイケリス「スヌーピーの父 チャールズ・シュルツ伝」を購入。

翌日の打ち合わせに向けて最後ちょっとした仕上げをしつつ、バーストしない範囲でExcelいじって終了。

 

10月に入ってからにはなるが、tofubeatsのメジャー10周年で、私の好きなtofubeats楽曲プレイリスト企画を

major10th — tofubeats

でやっていたので、tofubeatsおよびその周辺に何かを狂わされた一人のリスナーとして一応書いとこと思って、勝手に記載。サブスクないの多いので、マジでメモでしかないけど、後で見たらそういう気分やったんかという気持ちになるのでこういうのは重要だったりする。

順不同。なお、別名義作品は全て最大限の愛とリスペクトがありますが、別名義なので全部対象外。ユニット、客演、作詞・作曲、tofubeats楽曲のRemixは対象としています。

tofubeats - in my room (TOFVBXVT$ chopped and screwed)

オノマトペ大臣とトーフビーツ - We Just Wanna Know

・dj newtown - intro feat.tofubeats

tofubeats - m3nt1on2u feat.オノマトペ大臣

tofubeats - Lost Decade feat.南波志帆

tofubeats - 2005 #tokyo0505 mix

tofubeats - Notice Me feat.MACO

tofubeats - DANCE & DANCE

tofubeats - OISHIN-BOOGIE(t*fu is goin crazy) #vaporboogie

tofubeats - 20140803

tofubeats - ひとり

tofubeats - #eyezonu

tofubeats - drum machine

tofubeats - notitle (LMK)

tofubeats - STAKEHOLDER -for DJ-

tofubeats - (I WANNA) HOLD

tofubeats - SHOPPINGMALL

tofubeats - CHANT #2 - FOR FANTASY CLUB

tofubeats - WHAT YOU GOT

tofubeats - ふめつのこころ SLOWDOWN

tofubeats - SMILE

tofubeats - 自由

tofubeats & dodo - nirvana

tofubeats - YUUKI (TB FUNK MIX)

・dancinthruthenights - ダンシンスルーザナイト

・dancinthruthenights - Local Distance

パジャマパーティーズ - mp3 (tofubeats discojam)

・TOMORROW'S EDITION - PART TIME LOVE(tofubeats EDIT)

9nine - 夏 wanna say love U (tofubeats remix)

・FPM - Hey Ladies (tofubeats 正体不明remix)

・SKY-HI - 愛ブルーム (tofubeats ¥enternet-experience remix)

Ayuse Kozue - Cry Baby ( tofubeats Remix)

中川亜紀子 - 夢の都TOKYO LIFE (tofubeats edit)

・TENDRE - RIDE - tofubeats remix -

・tengal6 - プチャヘンザ!

lyrical school - FRESH!!!

オノマトペ大臣 - CITY SONG

tofubeats - window ( dust.c REMIX)

 

勝手に選んで思うけど、多すぎる。これでもかなり絞った方。もうちょい厳選したかったけど、厳選もくそも全部かっこいいので挙げだしたらキリないんでどんまい。もっといい曲を聴き続けたい。これからも。

【音楽妄言多謝】Jersey Clubで飯は食えるか -NewJeansの喧騒の外でテン年代のインターネット音楽の一部を振り返る-

シリーズ化するかはわかりませんが、音楽関係の話をしたくなったのでします。

【音楽妄言多謝】と銘打った書き起こしです。その名の通り、出まかせだと思いながら読んでください。間違って本気にした人は、まあそれはそれで夢を見たと思うくらいでいいと思います。文責は以降全てTKMRになります。

なお、このブログでは基本的には(一部を除き)すべて今インターネットで聞けるものしか記載しないルールにしています。あれがないこれがないはおっしゃる通りですが、聞けないものの話をされてもというのはあるので、その点はご了承ください。

なお、Youtubeについては、動画管理者側により、埋め込み上での再生が許可されていないものは、一度Youtubeに飛ばされるクソ仕様になっているので、その点もご了承ください。

 

■人物紹介

・TKMR:このブログの人。

・KSMN:TKMRの友人。音楽が作れていろいろ知ってる。

 

TKMR(以降T):書き起こしなので自己紹介もいらないかと思って、とりあえず録音開始したんですが、考えてみたら、これからどこの誰かもわからないやつがこれが開示されるころには話題ですらなくなっている「NewJeansおじさん」になると考えると怖いですね。

KSMN(以降K):そもそもどこにこれを載せるかって話もありますよね。

T:noteは思想が合わないので無理なんで、そこはまた考えるとしまして。

T: 急に渋谷にKSMN氏をはるばる召喚して何を話し始めるかというと、Jersey Clubあるいは、それ的なビートを最近本当によく聞くなと思うと、30代にもなると黙っているのもなかなか苦しい(笑)

K:そういう音楽がマジョリティの人の耳にも入ってきてる状況にあるってことですよね。

T:そうですね、流れてるってことはどこかに需要があるわけで、そうすると、なんかみんな好きだったんだって言うのがまず第一の感想としてはありまして。

K:あれですか、好きなバンドがメジャーシーンに行く的なものの、でかい版みたいなやつですか。(笑)

T:まあ、そんなやつかもしれません。(笑)Jersey Clubって言われても、そもそもそれを知らんがなというくらいサウンドだけが当たり前になっているので、どういうものが該当するかというと、最近の流行歌では、NewJeans - DittoとかPinkpantheress - boy’s a liarなどの、1小節にキックが5回鳴るのが特徴的なビートですかね、めちゃくちゃ簡単に言うと。

K:NewJeansに関しては、2nd EP収録のETAも同じような感じに聞こえるかもしれませんが、Bmore(Baltimore Club)感が近いと思います。

T:なるほど。ちなみにNewJeansは250(イオゴン)の作曲・編曲。後者はMura Masaのプロデュース。

K:あの Mura Masaが。

T:おそらく休みの日になんとなく作った、あるいは数年前のプロジェクトを引っ張り出してきたのではとも言わざるを得ないスカスカビートでお送りしているという。いやまあ共同プロデュースなんで、どっちがビートを作ったかは知りませんけど(笑)

K:まあ、素晴らしい(感嘆)。ただこれスカスカってのは褒め言葉ですからね。スカスカで成立させる方が難しいんですよ(笑)

T:まあ、NewJeansの話はここで終わりなんですけど、そもそもJersey Clubみんな好きだったんかいってことと、それってアトランタベース・マイアミベースの流れからきてますよという丁寧な解説なども見るわけですが、「本当か君ら?」と。そこまで遡った話なのってことを僕個人としては結構思っていて。

K:まぁ、そういう意見に別にそんなに異論はないですよ。ヒップホップの文脈で語るときは2Pacから語らなければいけないみたいなのですよね、要は。

T:Jersey Clubの最近の流行に関して言えば、印象的なのはCookiee Kawaii - Vibe ( IF I Back It Up)がありますが、2022年リリースのDrake - Stickyがやはり大きく、近年のこの流行はヒップホップから始まっているんだという話も聞きますね。まあ、ヒップホップはもともとそういう新しいものを生み出す文化ということはあるんですけど、Drake,Drakeとね。。。いや、Drakeは偉いですよ。

Cookiee Kawaii - Vibe ( IF I Back It Up)

Drake - Sticky

とはいえ、もうちょっとなんかあるんじゃないですかね、ていうのが、特にテン年代に渋谷のクラブに行ってた(特にclub asiaやLounge Neo)人たちからすると違和感あるんじゃないのと。もうおじさん語りですけど。

K:老害ですかね。

T:まあ、老害ですわ、われわれも。とはいえ、一個もそれに触れてない、触れてる記事が観測できないのは疑問です。そんなにいっぱいミン・ヒジンのことが調べられるんだったら、とっくにたどり着いてますよねって気持ちにもなるわけですよ。もちろん、プロデュースに関して書きたいならそれでいいかもしれませんが、音楽分かったうえで好きですよみたいな感じのスタンスなんですよね、全体的に「批評」とか「分析」の体裁で書かれているものって。もちろん、それらについて書かれているものがないとはいいませんが、それもミン・ヒジン起点なのかなと。いいんですけど、別に。そういう裏側カルチャーが求められているんだと思うし。

K:ミン・ヒジンは、00年代にSMエンタテインメントでうんぬんかんぬんみたいなやつですか、それは。

T:そう。そこまでリサーチできているわりには、音楽的にはこれの参照元がおそらくこれだろうみたいなことには、もう調べがついているんではないですか?って気持ちにもなるんですよ。単純な疑問として。NewJeansが「新しい」っていう前提に立っていると、そういう話は出しづらいのかもしれないですけど、「新しい」のかどうかも本質的にはよくわからないというのが僕の現時点での理解です。

K:まあ、そうですよね。

T:で、そうなると、あなたはじゃあ一体何が好きな人なのって思っちゃうんですよ。

K:うーん、K-Popなんですかね。

T:その辺がいまいちよくわからない。たとえばビジュアルならビジュアルだという記載があってもいいはずだけど、それもそんなに見ない。NewJeansに新しさを見出すことってそんなに大事なことなんですかね。現に反証のようなリアクションも結構見るわけで。食い扶持探すってのはそういうことなのかもしれないんですけど。

T:ちなみに、K-Popが好きな人が書いた「本物」の記事は先にもうあるので、リンク貼ります。記事に勝ち負けはないですが、基本的にそこには全てが網羅されているし、記事の筆者はクラブ文化にも精通していて、R&BからJersey Clubへの流れみたいなものもきちんと書いてある記事なので、2021年当時とはいえ、すでにここで完成していると僕は思っています。

 

www.cyzowoman.com

※なお、なぜこの連載が途中で終了しているのか、載っているものを本にまとめることになっていないのか、ということに対して、誰に何をぶつければいいのかという不満は大いにあります。筆者が断ったうえでそうなっているのならばやむを得ないと思うのですが、、、とはいえ他ジャンルの回も含めて、これよりも充実したK-Popの音楽的分析記事は現実に存在していません。(断言)

 

T:そのうえで、先ほどクラブでの経験みたいな話もしましたが、こんなにみんなJersey Clubでわらわら騒いでるってことは、飛躍すると「え、もしかして、みんなDiploめっちゃ好き?」ってのが僕の思ったことなんですよね。

K:飛躍してるなあ(笑)DiploといえばSoundcloudが好きで、自分の曲のRemixをパトロールしていいねして回っていたという、あのDiploですね。

T:なぜDiploが出てくるのかというと、NewJeansの2ndのリファレンスとおそらく考えられるEPとして、LIZ - Just Like You EPがあると思っています。当時はフリーダウンロードでこれがDiploのレーベルのMad Decentからのリリースでした。(注意:今は404で落とせない)楽曲はもちろん、各プロデューサー見てもフリーではあり得ないクオリティですね、今考えたら。

K:クオリティ高いですね。

T:この仮説からいくと、なんだみんなMad Decent好きだったんじゃんって思うところもあり、Diplo過小評価説はちょっとあるかなと思い至ったわけです。

K:なるほどなるほど。

T:では、ちょっと曲を聞くパートも入れましょうかね。まずは、話の始まりということでNewJeans - DittoとPinkpantheress - boy’s a liarですかね。

 

NewJeans - Ditto

Pinkpantheress - boy’s a liar

 

K:感想としては、Dittoに関してはスキャットが素晴らしいですね、特に。

T:boy’s a liarに関しては、単純なループを歌の力で最高にするという、ほとんどどうなってんねんってくらいに歌ですね。

K:boy’s a liar好きな人は、ぜひMura Masaの最新のアルバム「Demon Time」を聞いてほしい。

T:個人的には、見せたい場所が全然違うというか、強度のポイントが個人とこのプロデュースでは違いすぎるところも頭一つ抜けているところかなと。

K:「Demon Time」の中では特に「bbycakes」というLil Uzi VertとPinkpantheress、Shygirlとやっている曲が素晴らしいです。

 

Mura Masa - bbycakes with Lil Uzi Vert, PinkPantheress and Shygirl

 

T:PinkpantheressはMura Masaのプロデュースがいくつかありますね。とはいえ、Mura Masaプロデュースに限らず曲も多様で、2Step系もあれば、Jungle系の曲もやっていて、どれも僕は好きですね。

T:両方の感想として共通で出たのは「とにかく音数が少ない」ということですね。

K:そうですね。

T:過去に我々がSoundcloudに夢中になっていた、クラブによく行っていた2015~2018くらいのころから考えると、同じJersey Clubでも違和感というか、隔たりみたいなものを感じています。理由はおそらく、当時は聞かせるボーカルがなかった、つまりぶっこ抜きでのBootleg合戦だったので、元の曲を聞かせる方向ではなく、サンプルやらシンセやらを足しまくって、いかにおもしろくできるか合戦になっていたのかなと思うんですよね。

T:ちなみにNewJeans,Pinkpantheress関連で思っているもう1つの疑問としては、後でやりますけど、原曲でJersey Clubをうまくやっているものも最近は結構リリースされているのに、それらが過小評価されてること、あまり関心持たれてないことってのもありますね。結局このNewJeans等々をめぐる喧騒に関して、特に2nd以降は、仮にいわゆる「楽曲派」的な何かが持ち上げているのだとしても、その音が好きなのか、他の何が好きなのかが、いまいちわからないってのが気持ち悪いってのが感想としてはあります。
(注:話の中にあまりおさまらかったので、最後に音源だけまとめて記載しています)

T:話がかなりあちこち動いているんですが、改めてアトランタベース文脈の話も少し振り返ってみるかということで、アトランタベースでいうと、異論は多少あるかもですが、おそらく一番有名な曲としては、Ghost Town DJ’s - My Booがあるかと思っています。

K:おそらくですね。ポップスの中では、アトランタベースやマイアミベースを取り入れた曲で有名なもの、それこそMariah Carey - H.A.T.E. U (So So Def Remix)とかもありますし。でもまあ、My Booでいいとは思いますよ。

T:My Booはさすがに聞かなくてもわかるということで、当時とても聞かれていた、Wave RacerによるRemixを聞いてみようと思います。これ、Wave Racer自身はSCから消しているので、ネットで今聞けるのは違法転載ですね。

K:あれ、Cosmo’s Midnightじゃないんでしたっけ?

T:Cosmo’s MidnightはDestiny’s Child - Say My NameのRemixですね。まあ、同じような感じですけど。

T:ちなみに自慢になってしまいますが、僕はDLできる期間にDLしたので、ここで流すものは、話題の「割れ音源」ではないです。

※以下は無断転載なので、再生は推奨しませんが記載はしておきます。

 

Ghost Town DJ's - My Boo (Wave Racer Remix)

 

T:耳にタコができるくらい聞いたって感じですかね。

K:そうですね。20歳くらいですか。

T:年齢差あるので、僕はもう少し年とってましたけど。(笑)感想としては、さっきの2曲聞いた後だと、サンプル多い、シンセがバンバン入る。

K:かわいい。

T:そうですね。でも、なんかこれ系に近いかというと、ちょっと微妙な感じもする。

K:そこで、遠い昔の記憶をもう一度たどったと。まあ、実際はたどるほどもなかったわけですけど。

T:250のインタビューで、「Mad Decentの、テン年代の曲を聞いている」という話があったので、そこから連想されるのが、さきほど話に出したLIZですね。LIZのJust Like You EPから「Y2K」という曲ですね。プロデュースはLido。前半部分はFuture Bassですけど、後半部分のJersey Clubの感じになってからは、歌で聞かせるような、今の流行の感じにかなり近いなと思います。全然サンプルでごちゃごちゃしてないし、スムーズ。

K:ただ、なんかやっぱりLidoのプロダクト感というのが出まくってるので、丸パクリはできないとは思うんですけど。

T:そうですね。ただ、NewJeansやPinkpantheressの曲を作った人たちのリファレンスにはあっただろうなというか、聞いてはいただろうなというのはありますよね。

K:なんなら僕はNewJeansに関しては、2ndEPはこのEP全体を完全にリファレンスにしてると思ってますけどね。

T:それでいうと、Pinkpantheressも2Stepの曲あるけど、それもこのLIZのEPに入っている「Do I Like You」という曲が多少のリファレンスにはなってるかなと思いますね。

T:この中からあらためて、ではLIZ -Y2Kを聞いてみますか。

 

LIZ - Y2K (Prod. by Lido)

 

K:感想としては、まず「Lidoだなあ」ですかね。とはいえ、やっぱり似たような雰囲気はありますよね。

T:冒頭のスキャットもそうですし。これ誰も言ってないのマジで謎だなあと思うんですが。Twitterで1人外国の方が言ってるくらいですかね。

K:「LIZのEPとNewJeansとPinkpantheressってすげえ似てるよね」っていう1つのポストだけ。

T:まあ、NewJeansの話を今日本語圏ですると結構だるいので、それで言ってないって人も一定数はいると思いますけどね。

K:どの方向からでも何かしら言われる可能性が高いですからね。

T:でも、そのこうやって振り返る中で、250のインタビューではないですが、「もっとMad Decentって評価されててもよくない?」ってことはやはり思っていて。クラブ好きは結構好きだったのに加えて、それこそ「Harlem Shake」とか世間的に影響力はあったとは思いますが、とはいえ、20年代の音楽を見ていく上でも重要だと言えると思いますし、早かったものが多かったのかなとは思うんですよ。

 

Baauer - Harlem Shake

(追記:個人的には「Baauer」の最高の仕事はいまだに「Aa」だと思っています。「Planet's Mad」も好きですが。)

T:まあ、あと今結構みんなUK大好きでしょ。

K:UKドリルとかね。北欧のプロデューサーとかもそういう感じあるし。

T:みんなここ最近は「2-Step」「Gagage」「Jungle」とか。まあ、なんでもいいんですけど、2020年くらいから、クラブ行ってた人たちはぶっちゃけJersey Club飽きたんですよ。

K:そうですね、なんか食傷気味というか、お腹いっぱいというかね。

T:2019年くらいからそれであのジャンルは放っておかれた感じがあって、全員がイギリスに行った気がします。レーベルでいえば、「Shall Not Fade」とか、ダメになりましたけど某レーベルとか。

K:それこそ、ハウスとかいいよね、みたいな。四つ打ちってやっぱいいよね、みたいな感じですよね。

T:こういう風に言ってると揶揄にも聞こえますけど、実際僕もかなりそういう音源買ってて、本当に好きですしね、今でも。あとは、国内的にはCYKやNC4Kのような洗練されたクルー・レーベルがそういう音楽をどんどんかっこよくやってプレゼンスを上げたということもあると思います。

K:僕も正直「もうJersey Clubいいよ」ってその時は思って「聞きすぎ」って感じはあったと思う。

T:2019~2020くらいからは実際徐々に個人個人が作りたいものを作るっていうフェーズになったというか、日本のプロデューサーだけではないけど、experimentalな音楽を作る人が増えたり、ハードハウスとか、UK系のサウンドにシフトしていく流れっていうのが、あったかなというのは思っています。

K:で、まぁ同窓会じゃないけど、K Bowさんが新しいのをリリースしたら、それはみんな楽しく聞く、チェックするみたいな感じですよね。

T:K Bowさんは、特にこのころまでの日本のJersey Clubの話をするうえでは欠かせない人だと思っていて、突出しているプロデューサーだなと思います。

K:それこそやっぱりもうテンプレートがあって、それを発展させていくみたいな感じらしいですよ。

T:ここでかけるのは、これではないと思いつつ、オフィシャルのリリースでは、JUBEE - Joyride (feat. SARA-J)のRemix。今から考えると、アーティストにとってもシーンにとってもちょっと早すぎたかなと思いますし、今改めて爆跳ねしてもいいものかなとは思います。

 

JUBEE - Joyride (feat. SARA-J)[K Bow Remix]

 

T:ということで、今更こんな話をして、何が言いたいのかってことなんですけど、結論としては、これは金になるのでは?ということですね。汚い話になりますが。もちろん、僕らが作るとかそういうことではなく。というのも、2〜3年飽きてたわけですよ。Jersey Clubから。そしたら、オーバーグラウンドでめっちゃ流行りそうだよ、気にしてるみたいだよっていうね。

K:ハウスにしてくれって話よりも、Jersey Clubにしてくれって話の方があるのでは、ということですよね。極端な話をすれば。

T:それこそ、音楽業界の方に「君もNewJeansに近い音楽を届けるアイドル、アーティストを作れるかもよ」というお得な情報です(笑)。

K:なんか、僕らが観測できてないだけで、全然あるんだろうなって気はしますけどね。

T:あるとは思いますね。地下ではないですし、むしろオーバーグラウンドで勝負している例としては、これも早いですが水曜日のカンパネラ - バッキンガムですかね。2021年のリリースで、ケンモチヒデフミ氏の作詞・作曲です。ビートはJersey Clubですし、サビではFuture Bassっぽい音色や、頭の方ではアトランタベースっぽさもあります。

 

水曜日のカンパネラ - バッキンガム

 

K:Future Bass感はアーティスト的な見せ方の部分も絡んでいるのかなと思いますが、ビートはJersey Clubですね。

T:日本人で、特にRemix以外の仕事でJersey Clubをやろうとすると、Future Bassっぽさが伴うというのも1つの傾向かなと思いますね。これは、より聞かれるためにポップな魅力が求められたり、その他もろもろの条件から来ているのかもしれません。あとは、日本人が意外と「うるさい」のが好きってのもあるのかもしれません。根拠はないですが、音数が多いと得した感があるというのは個人的にありますね。

T:今回の話をするにあたって、国内でリリースされているJersey Clubっぽい楽曲をリストアップしたものを見ていますが、どれもFuture Bass感はありますね。少なくとも、最初に聞いた2曲のようなスカスカ感はあまりない。このリストは恣意的ですが、おそらく日本で一番聞かれた、あるいはクラブで流れた、「Jersey Club的なビート」+「今言っているFuture Bass感」を持った曲はこれかなと思いますね。どちらかというと後者のインパクトの方が強いですが。とはいえ、当時は間違いなくどこでも流れていた記憶があります。

 

tofubeats - CAND¥¥¥LAND feat. LIZ (Pa's Lam System Remix)

 

K:tofubeats - CAND¥¥¥LAND feat. LIZ (Pa's Lam System Remix)ですね。今流れてもブチあがる人は一定数いますよね、やっぱり。

T:そういう意味では、Pa’s Lam Systemの存在が大きいですかね、やっぱり。代表曲で彼らの知名度を圧倒的に高めた曲であるI’m comingもそうですし。

 

Pa's Lam System - I'm Coming

Pa’s Lam SystemがJersey Clubのアーティストを自称しているわけではないし、本人たちはそんなつもりないし、そんなつもりで作っては微塵もないと思いますが、結果的にJersey Clubのリズムをうまく取り入れて、日本の当時のクラブで圧倒的に聞かれたアーティストだと思います。HyperJuice - City Lights Feat. EVO+ , JinmenusagiのRemixも印象に残ってますね。

 

HyperJuice - City Lights Feat. EVO+ , Jinmenusagi (Pa's Lam System Remix)

 

K:PARKGOLFのWoo Wooもよく聞いたなと思い出しました。あの曲自体が全般ジャージークラブではないですし、その後はFuture Bassだったり独自路線にすすんだアーティストだと思いますが、1つ大きな曲だったと言える気がしますね。

T:今作曲に参加されているアイドルの曲なんかはけっこうそういうテイストも入っていて、これもおもしろいなと思っていますね。

 

PARKGOLF - Woo Woo

 

ばってん少女隊 - 御祭sawagi

 

T:そもそも当時のJersey ClubがなぜあんなにSoundcloud中心に盛り上がっていたのかというのは、Trippy Turtleの存在が大きいですね。公言はおそらくしていないと思いますので誰とは言わないですが、有名プロデューサーの変名です。このアカウントが2013年にSoundcloudで90年代から2000年代のR&BのJersey ClubによるBootlegを出しまくりまして、数か月後にはDiploのBBC Radio1でやっていたDiplo & Friendsでmixが流れて、これはやばいというのが全世界的に広まったのかなと思っています。

 

 

T:その前でいうと、Cashmere CatのMirror Maruですかね。メジャーリリースでこの文脈からいくとまず最初に言及されるべきところがここになるかなと思います。

K:そうですね。一番大きな道標と言える曲なのかなと思います。

 

Cashmere Cat - Mirror Maru

 

T:この辺は実際の親交がおそらくあって、遊びで作ったりもしていたのかもしれません。

K:彼らのクルーのfofofadiのルールとして、名前の頭文字が同じというのがあって、Cashmere CatならCC、Trippy TurtleならTTという感じになっているんですよね。

T:日本だと、K Bowさんが1番最初に出してるのが2013年に安室奈美恵 - Baby Don’t CryのBootlegですね。

 

安室奈美恵 Baby don’t Cry (K BoW jersey remix)

 

ご本人がbandcamp消してるので聞けない音源も多いですが、個人的には、倖田來未 - 恋のつぼみBootlegは、今J-PopでJersey ClubのRemixやるなら、ぜひリファレンスにしてほしい1曲ですね。あとは、SKY-HI - 愛ブルーム (tofubeats ¥enternet-experience remix)ですかね、明らかにやりすぎてますけど。これはSpotifyなくて、当時iTunes限定リリースらしくて、今はYoutubeではshort.verだけ聞けますね。今だったら全然大丈夫かなと一瞬思いましたけど、ダメかもですね、もしかすると(笑)

K:そうですね、これは当時tofubeats自身も「今しかできない」って言って出したなんて話も見た記憶があります。

 

SKY-HI - 愛ブルーム (tofubeats ¥enternet-experience remix)

 

T:あとは、いろんなアーティストの変名とか所在不明のアーティストになっていきますが、それこそblu-ra¥ - Blu-Ra¥'s K¥SS0F1if3 (Reprise)。これはOriginal Love - 接吻のBootlegです。

 

blu-ra¥ - Blu-Ra¥'s K¥SS0F1if3 (Reprise)

 

T:fofofadiだとDrippy Dolphinはもちろん、あとはContent ID マンションなんかも一部Jersey Clubがあったかなという感じです。この辺は結構僕らの好きなところを抽出しているので、他にも本当にたくさんいろんなリリースがあって拾い切れては当然ないですが、この近辺でそれらがまとまっているので言うと、tofubeatsのDiplo & Friendsのmixかなと思います。

K:これは当時ダウンロードもできたんじゃないかな、多分。

T:これは日本人プロデューサー多めで本当にいろんな音源が入って、いったんは当時のMAXが出ているところなのかなと。趣旨から外れますが、mixの締めはいわゆる「クラブ」って感じの曲でないあたりも愛せるところだなと思います。

 

 

T:ちなみにこのあとにTrippy TurtleはMad Decentから完全オリジナルのリリースをするわけですが、これがあんまり跳ねなかった(笑)

K:そうですね、僕は好きなんですけど、やっぱりBootlegでやってるからこその良さみたいなものを感じていた人も多かったのかなというところはあると思います。

T:あとは、この話を始める時に出ていた話題でいうと、OWSLAというSkrillexのレーベル内のレーベルというかメディアであったNEST HQからリリースされた、DJ HoodboiのMiniMixですね。これも素晴らしい。

K:そうですね。当時のJersey Clubを聞くという意味では詰まってる感じがします。

 

 

T:NEST HQ自体は消えたので振り返れないんですけど。あと、K-Pop系だと僕が最初にアレ?ってなったのはNU'EST - Overcomeかな。Jersey Clubではないけど、BedSqueakが使われていて、こういうのもやるのかって思った感じですね。

K:Jersey Clubで使われる「キコキコ」というベッドの軋む音ですね。

T:そして、2016年に出たVDIDVSのEP「R.I.P.V.D.I.D.V.S.」はデカかったと思います。これは、みんなが「自分でも作りたい」ってなったきっかけにもなったような気がします。K Bowさんや今まで名前をあげていたような、いわゆるMaltine界隈プラスアルファのような人たちとは違う人が出現して、こういうおもしろい人がまだまだいるっていうので、よりそういう機運が加速したんじゃないかな。このEPの中で一番聞かれているのは、KID FRESINO - Special Radio ft.IOのBootlegです。

 

Special Radio (K BoW X VDIDVS Remix)

 

この曲はヤバい。K Bowさんとの共作です。原曲も今日改めて聞いてきましたが、原曲自体も相当かっこいいビートなんですよ。でも、これは原曲を壊してなくて、かつクラブで盛り上がる感じに仕上がっているなと思います。原曲部分のラップも美しく使っていて、本当にさすがですね。というわけで、今日の結論部分に行くと、これってオフィシャルでよくね?って話なんですよね。

T:年表も一応用意なんかはしていて、もう少し触れたい部分もあるんですけど、例えばSHINEE - PrismもGarageのいい曲ってのはもちろんなんですが。

K:これもBedSqueak使われてますよね。

T:そうですね、EXOのTempoもBedSqueakが使われていたり、K-Popグループのデビュー曲でJersey Clubが使われていたり、なんてのは、最初に挙げた参考文献読んでもらえればってとこですかね。

K:2020年から2021年くらいにデビューしたK-Popグループがやたら実験的なビートを多く使っていた印象があります。バイレファンキもあった記憶がありますし。

T:この辺はアンダーグラウンドが忘れていたころに、ひそかにオーバーグラウンドで何かが進行していたという点でもまだまだ振り返る余地がある気がしています。

T:そして、最初の話に戻るわけですが、2022年リリースの「Honestly, Nevermind」に収録された、Drake - Stickyです。

K:これがリリースされたときは、正直びっくりしましたね。

T:Jersey Clubの再流行のきっかけとも言われていますが、振り返ってからあらためて考えたときに、どうなんですかね。

K:うーん、どうですかね。。。

T:単純にみんなが「ああそういえばそんなんあったな」みたいな感じで作り始めたような気もしますが。

T:同年にはLil Uzi Vert - Just Wanna Rockがリリース。これもJersey Clubで、こちらはバイラルヒットしていますね。

K:今でもLil Uzi VertのSpotifyでは1番再生されてますね。

 

Lil Uzi Vert - Just Wanna Rock

 

T:そして、「boy’s a liar」があって、「Ditto」があって、というわけで、いやどこが金稼ぎなんだと、さっぱりそんな話にならねえじゃねえかということなんですけど、いやいやなるんじゃないすかってことで、Bootlegはオフィシャルになるんじゃねという希望もあるのではということなんですよ。さっきのSpecial Radioじゃないですけど。

K:なるほどね。

T:ここで一曲聞くのは、Peterparker69 - Flight To Mumbai (VDIDVS Remix)ですね。これ今は公式のRemix集に収録されているんですが、もともとはSoundcloudBootlegとして公開された曲なんですよね。どういうわけか、それが公式化していると。ちょっと聞いてみましょう。

 

Peterparker69 - Flight To Mumbai (VDIDVS Remix)

 

T:まあ、素晴らしいですね。これを聞いても、「いやでもとはいえ、むずくね?」と「奇跡だろ?」という話もあるかもしれないですけど、参考になるような事例も1つあるわけでして。読者の中には、いろいろと思うところがある方もいらっしゃるとは思うんですが、Future Funkというジャンルです。あのジャンルって、もともとはもろBootlegだったわけですよ。Bootlegの塊と言っていいでしょう。

K:存在自体が違法ですからね、言ってみれば。完全なアウトローの音楽です。

T:それがいまやどうですかと。とんでもないことになっていて、全てが公式リリースになる勢い。公式リリースの嵐。

K:まあ、食っていけてますからね、現実問題として。すごいことですよ。

T:ということはですよ。

K:あるだろと。

T:Jersey Clubからも食っていける道があるんじゃないかと。別に、Jersey Clubをずっとやり続けなくてもいいわけですから。あの人たちも、Future Funkを一生やり続けているようにも見えるけど、現実には別にそういうわけでもなくて食えていると。そっからいろいろ手を変え品を変え。

K:某フランス人のプロデューサーは、そっからBMW買えてるわけですからね。(笑)

T:そういうことですよ。だから、夢があるわけですよ。SoundcloudBootlegを出しまくっても、最後に拾われる可能性があるわけです。だから、1つは、飽きても作った方がいいかもしれないということ。

K:自分が飽きてたとしてもってことね。

T:結構前に作って、これは興味ねえなって思ったものも、リリースしたら意外とおもしろいかもしれんと。あとは、新曲は積極的にRemixしたらおもしろいことになるかもしれんということですね。最近だと、宇多田ヒカル - Gold ~また逢う日まで~ のTaku TakahashiによるRemixが出ましたけど、あれってJersey Clubですよね、要は。

 

宇多田ヒカル - Gold ~また逢う日まで~ (Taku’s Twice Upon a Time Remix)

 

K:あれは、宇多田ヒカルサイドから本当に依頼があって作られたのかは定かではないですよね。

T:まあ、経緯はわかりませんが(注:実際にはこちらのインタビューにて、いろいろ経由して宇多田ヒカルが依頼したということが明記されています。)、完成形を聞くとですね、Taku Takahashiにあれをやらせておくのは、ちょっと儲けすぎではございませんかという気持ちにもなるわけですよ。正直申し上げれば。

T:K Bowさんが作る未来もあれば、VDIDVSさんが作る未来もあれば、近いところでいうと、pìccolo君が18年に作ったRed Velvet - Russian RouletteのBootleg、あれ尺短いんですけど、あれでいいと思うんですよ。彼はもうJersey Club作ってないし、興味ないかもしれないですけど、僕はあれでいいし、あれがいいって思っちゃいました。個人的にもすごく好きなので。

 

Red Velvet - Russian Roulette (pìccolo Club Edit)

 

T:音楽業界の人に対して思うのは、たとえばそういう人たちのを聞いて、いいと思うなら、そっちに金払ってよって思うんですよ。もちろん、ネームバリューとかの問題もあるんでしょうけど、宇多田ヒカルくらいじゃなければいくらでもなんとかなるんじゃないの?って思うんですよね。

T:これは別にTaku TakahashiのRemixを否定しているわけではないんですよ。好きなのは前提で、個人的好みとしては、もうちょいカマして欲しかったなという気持ちはありますけど。

K:もう一個カマしてほしかったというのはありつつ、こういうクオリティの高いプロダクトがあるのは大事ですからね。

T:だったら、他にも回してもらえませんかって気持ちなんですよね。それは俺ら自身が作るって意味じゃなくて、もっと他にもおもしろいプロデューサーいますよってことで。

K:才能はゴロゴロ転がってますからね。

T:そういう意味で繋がるかはちょっと微妙ですが、最後にここで言及しておくとしたら、おそらくこれはもとから公式で提供予定だったものがそのままリリースされたんだろうなと思いつつ、ピーナッツくん - グミ超うめぇ(PAS TASTA Remix)には触れておきたいですね。おそらく、今年今後出るRemixを入れても、個人的1位が揺らぐことはまずないと思います。

 

ピーナッツくん - グミ超うめぇ(PAS TASTA Remix)

 

K:完成されてると。

T:完成というか、ここまでの内容に何かしら覚えがある人は間違いなくぶっ刺さった作品だと思いますし、Aメロ以降のJersey Clubだけでなくてバイレファンキ的なものも入って、サンプルガチャガチャで音数もめちゃくちゃ多いですけど、それが全て刺さってしまう。

K:あれどう分業してるんですかね。

T:誰が各パートをやってるのかわかんないですけど、とにかくすごい。ああいうのをもっと僕は聞きたいんですよね。あれが実際回ってるかどうかは確認してないですけど、回ってるんじゃないのって思ってるし。

K:回っててほしいですよね。

T:いや、ほんとに。

K:そういう意味では、今回の宇多田ヒカルのRemixもガンガン回して数字出るってことが伝わる感じだといいですよね、次に同じ感じで繋がっていくというか。

T:そうなると、みなさん眠らせていたプロジェクトファイルを掘り起こして、金儲けしてもらえばいいんじゃないかと思うわけですよ。だって、Future FunkでBMWが買えてるわけですから。プロデューサー側は金儲けのためにやってるわけじゃないってのもわかるんですけど、そっちで金儲けて、好きなことやるってものありなんじゃないすかねとは思います。いまどきそれを「セルアウト」とかいうやつはいないでしょ。音楽業界の困っている皆様は、もう一度Soundcloudを確認してみようということで。(笑)

T:僕らが作れないにしても、聞かれたら紹介とか推薦とか、この辺に声かければとかは好き勝手言うし(笑)

K:現実的にはそれこそTREKKIE TRAXとかに今なら連絡が行くんだと思いますけど。

T:実際、原曲というかRemixでないものでいうと、Cola Splash - Cola Splashはボーカルとかはないですけど、Jersey Club的な名曲だと思いますし、日本のレーベルでそういう文脈ならまずはTREKKIE TRAXなのかなというのはありますよね。実際たくさん来てるのかもしれません。知りませんけどね、例によって。

 

Cola Splash - Cola Splash

 

あとは、個人でやってる人だってたくさんいますから。それこそ勝手に名前出すのは失礼かもしれないですけど、T5UMUT5UMUさんがプロデューサーとしてオーバーグラウンドで活躍していないのは日本とか音楽業界にとってもったいないなと個人的には思ってしまいますね。

 

t5umut5umu.bandcamp.com

 

K:もちろん、本人がやりたいことをやれているので今の状態が適切という可能性もありますけど、そのうえでも見てみたいということですよね。

T:断っているのかもしれないですけど、たくさんいろんな連絡が来ている現状だといいなと勝手に思っていたりもします。

T:まあ、時間も迫っているのでまとめると、Bootlegは金にできないのか、あるいは、金になることを目的としていなかったものが金になることのおもしろさ、愉快さを見つけていきたいよねってことですよね。

K:前例もできましたからね、実際。ここからどうなるかですよね。

T:まあ。前例にみんなで乗っていこうと。

K:でも、実際マイナスなんてないですからね、座組的には。

T:ほんとうにそうだと僕自身は思っていて、実際hirihiri君なんてパーティーに昔呼ばせていただいたときは、あんまりお金ないっぽかったけど、今やCMやってるし、当然のように食えてるでしょ、おそらく。

K:余裕で食えてるでしょ。

T:夢あるなと。好きであんな風にいっぱい作って飯食えてる。そういう人を増やしたいですよね、別に我々は何の立場でもないですけど(笑)まあ、そうなると単純にいい曲たくさん聞けるし。

K:そうですね、そうなるといいですね。

T:ということで、今日の話はこの辺で終わりです。

T・K:ありがとうございました。

 

注:文章全般を通しての「敬称」が入っている、入っていない人の線引きについては、「タモリ」を「タモリさん」とは一般人は呼ばないみたいなことだと思ってください。最近はなんでもかんでも「敬称」をつける人がいますが、あれはかなり違和感が個人的にはあるので、距離感で使い分けているつもりです。

 

編集後記:書き起こし記事は初めてだったので、収録から結局いろいろあって公開までに1カ月かかってしまったのは良くなかったと思いつつ、ある程度世間の熱が冷めてからの記事としては、素人が出すのにはちょうどいい期間だった気がしている。振り返れば、話題を持ってきた自分がめちゃくちゃな話の展開にしてしまっているなという反省もありつつ、後半はそこそこマシな話になったのではという思いもあり、なんかあったらまたやれたらいいなという所存です。

 

その他の参考音源:いろいろ取り上げたい音源はあったのですが、以下いくつか時間の関係上あげられなかったもので、おもしろかったもの、個人的に好きなものを書いて終わりにします。

 

・harmoe - きまぐれチクタック ( 作曲:Tomggg、作詞:ボンジュール鈴木

 

 

・ナナヲアカリ - チューイングラブ feat.Sou ( Taku Inoue Remix )

 

 

椎名林檎 - 長く短い祭 (wag¥ edit )

 

 

・ilovenightcore x 돈을 벌려고 - PRSMJRSYNGHTCR

 

 

・Jay Park x Hoodboi - All I Wanna Do (Sammy Seagull Remix)

 

 

m-flo loves CHEMISTRY - Astrosexy (mondaystudio remix)

 

 

・Trippy Turtle - Only Wanna Give It To You

 

 

ご感想やご意見もお待ちしております。俺にもしゃべらせろなどという奇特な方もお待ちしております。

3月や4月に思い出すこと

別にその時期以外も思い出したらいいし、忘れないようにしたらいいじゃんと思ってるけど、人間、少なくとも自分は生きていると常に覚えていなきゃいけないことを忘れてしまう。忘れようとしているのか、本当にキャパシティの問題で忘れているのかは定かではない。

 

人の人生は簡単に壊せてしまうこと。大したことのない人間である自分でも、他人の人生を簡単に壊せてしまうこと。壊し方なんていくらでもあること。壊された人から殺されても仕方ないことをしたことがあること。この国では犯罪になっていないだけで、犯罪みたいなことは簡単にできること。合法的に人の人生を壊しても相手が悪いみたいにできること。素知らぬふりして生き続けることが可能であること。壊したあとにどうなったかを知ることは多くの場合できないこと。知ったからといって多くの場合何もできないこと。人の人生を壊しても腹は減り、飯が食えること。人の人生を壊しても、眠くなり、安眠できること。人の人生を壊しても、金を稼ぎ、好きなものを手に入れられること。人の人生を壊しても自分の人生を守れること。

 

ただの破局といえばそれまでだが、高校時代から一緒だった人と20代半ばで訳のわからん自分の身勝手な振る舞いのせいで別れた。20代半ばまでの一番キラキラしているとされた期間を壊したと思う。

 

心療内科に行くとかそういうことがわからなかったとき、仕事に追われて自分の中でおかしくなって気付いたら夜中歩いて知らない場所にいた。朝になってそのまま電車に乗って、静岡の海岸にいって、一日それを見たあとで夜中に海に入った。そのまま死んでたら良かったけど、そんな勇気もなくて死なずに帰ってきた。あの時から親は本当に子どもがわからなくなったんだと思う。子どもはもともとわかり合えるとは思っていなかったけど。親の心が壊れる音が、公衆電話から聞こえたのをまだ覚えてる。捜索願が出される手前だった。

 

新しい会社に入って初めて先輩と言えるような関係性で仕事ができる人ができた。嬉しかった。一緒にならいろんなことができる気がしたし、目に見える理不尽を変えられると思っていた。彼が先に偉くなったとき、支えなければいけないところで支えなかった。今思えばそれは嫉妬だったのかもしれないし、自分こそが大事なんだといううぬぼれだったのかもしれない。ときに理不尽に責められる彼を見て見ぬふりをした。彼は会社に来なくなった。会わなくなって数ヶ月して、彼は会社を辞めた。最後に会ったとき、彼は酒が飲めなくなったと言っていた。食事もなんでも好きなように食べられるわけではなくなっていた。そのあとで自分は昇進した。表彰されて沖縄に行った。沖縄は何も楽しくなかった。

 

初めて明確な部下ができた。理不尽に責められることが多い子で、できるだけ守ったつもりだったけど、つもりでしかなかった。彼は責められ続けた。彼自身に本当に落ち度があったかどうかは問題ではなかった。そんなものを見続けているこちらの方が先に逃げ出した。そのころには心療内科を知っていて、薬を服用して耐え続けた。本当に耐えたり逃げたりしなければいけなかったのは自分ではなかったはずなのに。彼がどうなったかを見る前にそこから逃げるように辞めた。

 

新卒で入ってきた彼女は明確に武器になる人間性をもっていたけれど、上司とは合わなかった。理不尽に責められ続ける姿を見続けた。ただ見続けただけだった。壊れないように手を伸ばしたように見えるけど、本質的には何もしていないようなことをして、自分を正当化した。ある時彼女も会社をやめて故郷に帰ると連絡があった。壊れる可能性があるのに、知っていて知らないフリをした。壊れたあとで後悔しているようにした。本当にしなければいけないことはそんなことではなかった。

 

協力会社の彼は若くて活力があった。初めは1人でいろんなことをやって、後に同じ会社からたくさんのひとを引き入れることに成功した。うまくいっているときはなんにも問題なかった。会社的には上下があっても個人としてはいい仕事仲間だと思っていた。うまくいかなくなり始めたとき、彼がやり玉に上がった。多少彼が原因のところもあったかもしれないが、構造上、彼が勝手にできることは限られていた。そのうちすべてが彼のスタンドプレーとして扱われた。彼は普通のことが普通にできなくなって、自分の会社からいなくなり、所属していた会社も続けられなくなった。

 

心当たりのある人に刺し殺されても何も文句は言えない。その人たちに殺されるなら喜んで殺されると思う。そういう人が世の中にいて、自分がそういう人を作り出せるということを思いながら、また理不尽に人に評価をつけてしまった。

 

こんなことをウジウジずっと考えてしまうのは資本主義社会の発展していく会社には明らかに向いてないので早く辞めた方が多分いいんだと思う。

2023年3月

いつ言うかという機会をうかがいつつ、来週だなとなんとなくすべてを片付け始める。リモート中心の環境になったとはいえ、誰へのどんな気遣いかは全くわからんが、退職意思を伝える時くらいは対面がいいと思う。2月がパンク気味だったのは上司も把握しているということを暗に伝えられたが、まあそうなるような体制だからしゃあないと思っており、それとこれとは違うからややこしくならんか心配するなど。

 

ママタルトのYouTubeが正式に動き出していて非常に嬉しい。おもしろ長ツッコミは文字で見るとさらによいですね。

アトロクのアトランタベース特集でkelelaが流れて、知らなかったみたいなリアクションを聞くと、マジで世界は見えている範囲だけになってしまうんだなあと思う。別に知っているから偉い、知らないからハズイとかでは全くなくて。

アトロクの特集でデ・ラ・ソウルを初めてちゃんと聞き、めちゃくちゃかっこいいやんと思う。このタイミングで過去作もサブスク解禁ということで、しばらくいろいろBGMに使えそう。

 

もう別になんでもいいんですけど、ガキがいたら金足らんから奨学金どうにかするわみたいなんはいいんじゃないのと思うんですけど、「奨学金」というよりにもよってマジくそ制度過ぎるんじゃカスと全員が言っているものを引き合いに出してくるところが腹立つよな。ガキの教育費全般出しますとか、保育医療全般出しますとかだったらもろ手を挙げてやってくれやといいますけどね。そんなんこの時代にガキ作りたい、作ってるやつなんかやりたくてやってるんだからそれは応援してやれやというところまでは全員合意しているのに、その先で分断あおるのが頭いい奴のやることなんすかね。

 

もう全然全く嫌すぎるし、どうせこのあと金なくなるから解約するけどアーセナルが調子よすぎるせいでAbemaをプレミアムにしたのマジで最悪。調子よすぎるのは最高なのに。ネルソンの契約早く延長してくれ。

 

友人T氏から久しぶりにLINEが来たと思ったら、モンスターファームLINE版がサービス開始ということで早くやらなければならないのに放置している。やると一生やってしまうからかもしれない。早くやりたいけど、タイミングむずい。

 

石山蓮華氏が昼帯担当することになったのはとても良いことだと思っていて、事前番組の「あだぷと」を聞いている。選曲もいい感じなのだが、台本部分の内容が恥ずかしくなるくらいサムイ時があって、この選曲とかのセンスとの乖離は何?となったりしている。たびたび都市向けメディア等で見られるあの手の上滑り会話部分は良くない坂元裕二みたいなことなのではないかと思っている。

 

ムカつきすぎて書くの忘れてた。ハードディスク飛ばして10万で修理した。しゃあない。ハードディスクに全部入ってるから。おれの楽しかったこととかものとか全部入ってるから10万は安いってことにした。何回払いか忘れたけど。新しいハードディスクは当分飛ばないでくれ。

 

たとえ実家が直接被害にあって大変な思いしたとかそんなんがあっても、その時東京居たやつが何被害者面してんねんという気持ちがやっぱり大きくて、今日という日は関連の何かを何も直視できなくて本当にダメな人間だなあと思う。そして、そんな人間が今度は都合よくそっちで商売やろうとしているわけでして、目も当てられないと思いながらもそうすることでしか返せない何かがあるのではないかと勝手な言い訳をしている。

 

散髪。散髪時にどこまで言うか決めかねていたが、「明日会社辞めるって言うんですよ」と思い切って話してしまう。そこから何をどうするつもりかいろいろ話すなど。やはり先方はそういうのを経て店を構え客としての自分と向き合っているという状況を考えると、非常に冷静でありかつなんとなく「がんばったらいいんじゃないすか」的なマインドがあった。人と話すと本当にやらないかんな感が強まって、個人的には良いことだと思っている。具体的なことも考えなきゃいけないとか。とりあえず各種ページのドメインなどを抑える。

そのあと服を片付けてブックオフに売りに行く。初めての経験だが、量が多くさすがに持ちきれないためタクシーで移動。どうせそんな金額にはならないだろうなと思っていたが案の定タクシー代の方が高くついた。残念。

 

久しぶりに会社に2日続けて出勤。退職意思を伝えるため。2日目でようやく上司を捕まえたと思ったら、人員を増やしたいという話をされる。思わず、そのままに退職意思ややりたいことを伝える。一通り話しきるか切らないかのところで、「週3,4日で仙台からリモートで働けばいいんじゃない?」的なことを言われ、なんか思っていた展開にならず、安堵なのか拍子抜けなのかよくわからない気持ちになる。

聞けば、上司が最近見た映画が自分がやろうとしていることと重なっていたらしく、応援せざるを得ない気持ちになったと言われるなど。これを正直にとらえていいのかわからなかったが、もうなんか「私は本気なんです」をここで言っておかないとダメそうやなと悟り、とりあえず自分の今の想定をできる限り話続け、こいつの考えは嘘ではないということをとりあえず思ってもらうところまでは行けた気がする。とはいえ、裏側では家を引き払うことを決めており、今の家にも長くはいられないのだが、本格的に始めるまでは東京で的な雰囲気になり、そこだけ不安要素を残してしまうなど。

ということは会社に残留するということで、役職を降りることも必要ならありという話と誰か人を増やしたいという話をされ、前職時代に一緒に働いていた人で1人よさそうな人がいるからそれでもよいか確認。とりあえずいいから紹介してくれということで、早速LINEを試みるも「Unknown」の表示。ショートメールをとりあえず送り、返信を待つ。

辞めたとしても食べていくための副業的に今の仕事みたいなことはせざるを得ないと考えていたので、「辞める」だったものが「辞めない」に変わったことは、結果的には良かったとは思うのだが、なんか気持ちの収まりどころが見つからない。とりあえず方針の変更を両親に電話で伝える。おそらく母親は安堵していたところもあると思うので、よかったということにしておくかとも思いなおす。

頭の中で考えていた、人生の「東京サラリーマン編終了」に伴う変化などが白紙になったからといって、日常は待ってはくれず、もはや二足の草鞋を履くとなったときに困らない方法を今から準備していく方向にシフトしていくことになった。唯一の心残りは、変な髪形にしたり髪を染めることは当面できなさそうだということ。若い時にやっておけばよかったと、本当にできなくなる時に初めて思う。

 

とりあえず荷物をまとめ始める必要があり、段ボールにひたすら本を詰める。ならべてあったり床に置いてある分には全く思わないのだが、こうして出して箱に詰めるとこんなにあるのかよ、バカなのかよと自分でも思ってしまう。そのときに1度読み始めたら最後、永遠に片付かないということもわかっているため、無心で段ボールに詰め込む。詰めている途中で、新書はもういらないなとなんとなく思う。新書ブーム期と大学生の時期が重なっていたこともあり、それなりに冊数があるが、関連の内容を読みたい場合にはハードカバーで買っていたものを手に取ることが多く、なんか後から見たときに結構虚しくなるような感じが個人的にはしてしまった。1冊ずつ力を入れて作られているのだとは思うが、今本を読むならファストに消費できるものではなくてもいいのかなと個人的には思ったが、早川からは新しい新書レーベルが立ち上がるというニュースを目にするなど。実際、去年売れた現代思想系の新書も、重いテーマをファストに理解できる、しかも日常(ビジネス)などに接続できるような感じもするみたいなところがおそらくは大きかったんだろうと思う。個人的には、それならあっちゃんのYouTubeでよくない?と思わなくもないが、それでは格好がつかない人も一定数いるのだろう。

 

ショートメールには翌日返信があり、軽く概要を伝えるため久しぶりに電話で会話をする。仕事仲間といえばそれまでだが、言ってしまえば元請と下請けの関係だったわけで、そこから元請だったやつが今度は仕事の誘いという、どう考えても相手に甘えまくりの超強引なお声がけになってしまっているが、頼れて信頼出来て一緒に仕事したい人がその人しかいないので頭を下げる。聞けば、あの疲れが癒えずに定職についていないということで、とりあえず飲みに行くことに。どういう店がよいかは、大学時代の友人諸氏に意見をもらい、本当に一人ではなにもできないということと周りに恵まれすぎていることを実感する機会となった。

 

たまむすびの終了が近い中、アトロクの時間になってもなおラジオが耳に入ってこないくらい忙しくなってきている。年度末が近いということもあるが、とはいえ仕事量があからさまに増え、自分がやらなければいけないことがいくらなんでも多すぎる。そりゃ辞めさせないようにするよなあという気持ちと、構造的な欠陥がいよいよ大きな問題に波及しそうな予兆を感じながら仕事を進める。

アトロクではアカデミー賞の振り返り特集がおもしろかった。予想特集も聞いていたからとはいえ、いろんな映画やキャストの関係性や立場、それに伴う予想と振り返り、悲喜こもごもというところはあるのだろうが、みなさんの本音も交じりながらおもしろかった。特に今年は「エブリシング・エブリウェア・オールアットワンス」が席巻ということで、見に行くことを決める。木曜の競技タイピング特集もなかなかおもしろかった。もう普通にタイピングしているものとはおそらく全く違うものであり、そこで超人技が磨かれ競われていることがラジオを通じてよく伝わってきた。競技タイピングのチャンピオンがTBSの関連会社で働いていることを知ったときの宇内氏のリアクションの秀逸さに、大企業あるあるなんだろうなあと勝手に思う。役割ごとに会社を分けてホールディングスやグループ化することは珍しくはないが、あのリアクションなどを聞くと、なんでも分けて管理していればいいってものでもないのではという気がした。

 

土曜日。大阪在住のTさんが久しぶりに東京に来るということでTさん、Kさんと夕食。その前にコメダ珈琲で1時間ほど近況を話し、そのあとでクロアチア料理店「Dobro」に移動。クロアチア料理はどれもおいしく、クロアチアの特に白ワインがかなり自分の口に合っていてそれもまた非常にうれしかった。

各々の近況。Yさんはベトナム旅行と新しい仕事の始まりについて。非常に恵まれていたと今になれば思うが、これまで職種を変えることはなかったのでどこに行っても基本的にはおなじようなことをやればいいという分かりやすさが転職を後押ししていた自分にとっては、フィールドを完全に変えたY氏の決断はすごいと思う。それでも、氏が求めているのは別に大層な金額の給料や大きな規模の仕事ではなくて、普通に給料をもらって残業は少なく、たまの有給休暇で海外に行きたいというそれだけ。それでも、そういう大きな変化が付きまとってしまうのは社会として健全なのかというのは考えてしまうが、とはいえうまくいってほしい。

Tさんはパートナーととても仲良く過ごしているようで、その話を聞いているときがとても楽しかった。もちろん、細かい点や将来的な部分でやや不安に思われる言動などもなくはない気もしてしまうが、それも踏まえて楽しいのかなあとぼんやり勝手に考えてしまうくらいにはそういうオーラというか雰囲気がにじみ出ていた。しかし、食べるヨーグルトくらい自由にさせたらええやんとか2つ買えばいいのにとか平気で思ってしまう自分は、やっぱりそういう生活には向いていなかったのかなと思わせられる。

「結婚」や「子供」という話が周囲からは聞かれる年代であるというような話もいくつかしたが、現実には金銭や社会的環境が整っていても身体的にあきらめざるを得ない人がいたり、あるいは本人の意思としてこうしたいというのが明確にある場合などもあるということだけは忘れずに、友だちや大事にしたい人たちとは関わらないといけないなあというのは帰りにぼんやり思ったこと。そして、東京を離れて友だちと会わなくなったら、すごく寂しくなりそうだなということ。

 

K君が4月からの東京での生活開始に向けて引越してきたということと、自分の近況の話も軽くしたところで、とりあえず久しぶりに会おうということになり、それもまた楽しみに加わる。ベタに出会いと別れの季節とは言うが、正直なところそんなものがあろうがなかろうが適度に会って話したいというのが本音ではあるが、無理も言えない。それだけに、こういう機会はほんとうに自分を元気にする。

 

「丘の上の本屋さん」をシネスイッチ銀座で鑑賞。上司が見たという話をしていて、「見ます」と言った手前見ないのもなあというのと、単純にどんな感じなのか気になって見に行った。結論おもしろかった、いろんなタイプの人が古本屋を介して交わったりしながら、生活が動いていく。店主が冒頭で買い取った日記が誰もしくはどういう立場の人の日記だったのかが具体的にわからなかったのは、自分の読解力不足か。オチは悲しさはもちろんあるものの、かなりカラッとした感じというか、とはいえ本屋ってそういうもんでもあるよなという感じが共感できた。必ずなくちゃいけないものではないし、小さな本屋の1つの有無が劇的に何かを変えることはないと思うけれど、そこから何かを受け取った人の心には何かが残り続ける。そんな感じ。

 

その後、飯田橋の居酒屋で会社に紹介予定の前職で一緒だったT氏と久しぶりに会って飲む。前職を辞めてから今までの話や近況など、話すことは尽きなかったし、久しぶりにこういうかたちで会えること自体が嬉しかった。ふつうはこんな風に2年以上も経過してから会うような間柄ではないと考えると、少しは自分も誠意をもって仕事をしていたのではないかと思ったりもした。後半からは具体的に仕事の話。変な気持ち無しに、もう一度一緒に仕事がしたいということ、今度は対等な関係でもっと自由にやっていきたいということを伝えた。助けてほしいと。彼が「あなたがそう言うなら、そう言われたら断れないですよ」と言ってくれたのがうれしかった。

今思い返しても、前職はメンバーとして奇跡のようなそろい方をしていた部分も確実にあって、うまく歯車がかみ合えば間違いなく最高の仕事ができたのではという後悔じみた思いもある。そのメンバーを集められたのは当時の上司だったからというわけだが、一方であの職場が最終的に空中分解したのもまた当時の上司の存在があったからだったという、皮肉な事態だった。自分はおそらく空中分解の最後の部分を担ってしまい、そこまであるいは、それによって自分の初めての「部下」や「後輩」となった人々の人生をめちゃくちゃにしてしまったのだと今でも思っている。そんなことは私もそうですと言われたが、そう言える人と今度は仕事ができそうなのが嬉しい。そして、当時一時期だけではあるが「先輩」として頑張ってくれていた人も招いてまた飲みましょうと言われて別れた。会いたくないわけではないし、久しぶりに会ったらどんな話ができるのだろうと思う一方で、自分はその人に会うのが怖い。彼は「先輩」から一瞬「上司」になり、みるみるうちに精神・体調に異常が出て会社を辞めた。あの時、彼を支えるはずの自分が何をやっていたかといえば、自分の立場を守ることに必死だったのではないかと思う。彼があのようになってしまった一端は自分にも間違いなくあり、そういう意味では会って刺殺されても罵倒されても何の文句も言えないと思っている。そういう人を読んで酒を飲みましょうとはなかなかよう言えんというのが正直なところだが、リファラルが成功すると報酬が振り込まれることもあり、NOとは言えなかった。

翌日はWBCの決勝であり、前日自分にしては久しぶりにかなりのアルコールを入れたものの、使い物にならない状態で漂っている暇もないということで出社。在宅勤務でもそれなりに頑張っている方だとは思うが、とはいえ、制御が難しい状況になる日もあるので、結局はそういう時にいかに自分で無理やりにでも出社せざるを得ない。

 

仕事で久しぶりに完全なトラブル事案が発生。原因は自分ともいえるし、他部署の人間とも言えなくもない、微妙なところだったが、冷静に振り返ったときに「自分」6割くらいの気がしてきて、速攻謝罪と立て直しのための対応に時間を割く。俺のせいじゃないと一度思ってしまうと、結局対応するときのクオリティがあからさまに下がるというのはなんとなくの経験上理解できるようになってきたので、これは俺の凡ミスということにしてギアを上げる。ギアを上げたからといって取り返せるようなものではなく、せいぜい何とかなるくらいのところまでしかもっていけないが、その姿勢くらいは見せろやというのが世の常ということで、久しぶりに残業時間が40を超えて何かが失われる音がした。

 

そんなんもあり、WBCの優勝やらなにやらを飲み込む暇もないままに時間が過ぎていった気がする。しかし、大谷翔平がすごすぎることくらいはもはやだれの目にも明らかで、こんな人が出てきてしまったら、いよいよ野球の頂点を同じ時代に見ているのではという気さえしてくる。最後のトラウトとの対戦での直球えぐすぎる。そう思っても、2006のWBCを見て、今活躍している選手が出てきている現実があるということは、おそらくこれもまた誰かの物語の始まりになるのだろうと考えると積み重ねってやばいなと漠然としたバカの感想みたいになってしまった。

 

久しぶりに友人SさんからLINEあり。週末に電話でもということで正味3時間ほど近況報告とおもしろかったものや考えていることなどをあれこれ話す。もう完全に社会的な属性が変わってしまったので、お互いに考えていることや何を変化や面白としてとらえているかはおおよそ変わってしまったのだろうとおぼろげには思うが、それを明確にすることも野暮で、気づくと思うことや気になっていることを吐露していたのかもしれない。「機動戦士ガンダム 水星の魔女」、「チェンソーマン」を取り急ぎ見るようにということで、頭に入れる。いくつか自分からもおすすめみたいなことを言ったものの、多分それらが見られることはないだろうと知りながら真剣に話すおかしみを感じた。

気晴らしと、友人に会う話のタネにというところもあり、映画を見に行く。「エブリシング・エブリウェア・オールアットワンス」。アトロクでの話などから、個々の俳優に思い入れがある世代が見るとまた違うのかもしれないが、そのあたりはわからなかったので純粋にエンタメ映画としてはおもしろかった。最初何が起きているのかわからなかったが、ジャンプの概念が微妙に説明されたかどうかくらいのところでなんとなくわかり始めてからは、何かを難しく考える必要がなく見られた。その人にあったかもしれない様々な未来を見られるというのは、ある意味残酷だなと思う一方で、そこに落胆や歓喜している状態ではいられない。どこかの世界の「危機」と自分の世界の家族とか仕事とかのこれまた「危機」の前では、とりあえず戦うことが必要で、そのためにはジャンプのための馬鹿げた行為もやるしかないというのは、よくわかるし、矮小化になるかもしれんが自分の置かれた立場だけでもそれでもやるしかない感は至る所で感じ入るので、共感みたいなものが生まれやすいのもよくわかる。ジャンプのための馬鹿げた行為は「おもしろい」ではなく「馬鹿げた」だと解釈しているが、アジアや欧米ではどちらよりに解釈されているのかはよくわからなかったし、知りたくなった。少なくとも自分としては大喜利的な意味での「おもしろ」では別になかった。親切にすることだけでは現実はそう簡単に特にあの家族の場合には解決しないというのももっともだと思うし、そのあたりはハッピーエンドすぎる気もしなくはないが、「フィクション」でエンタメ映画なのでと自分の中では納得した。

翌日、今度は池袋で「THE FIRST SLAM DUNK」を鑑賞。世間から聞こえる劇賞に対して、「マンガ読んでないので」という弱すぎる言い訳一本で逃げてきていたが、そんなこと言ったらもう何も見れないということで満を持して向かった。アトロクで「そもそも今回の主人公は原作では深掘りされてなかった」という話は知っていたので、すんなり入れたし、なんなら終盤は普通に涙が出てしまう感動話だった。最終的にそこがあんまり強調されてこないくらいには、バスケシーンの攻防がとにかくおもしろい。実際の試合ではより複雑な戦術や読み合いが行われているのだろうが、映画で見る分には十分複雑だし、それぞれがちゃんと考えて動いているということがよくわかるのも、決まった台本に向かって進んでいる感じがなくてよかった。オープニングとエンディングの音楽も素晴らしい。ロックに対してもうそんなに思い入れもおもしろさも感じていない人間でも、あれは心がざわめく感じが音楽の力で引き起こされていたように思う。一応Dolby Atmosで見てよかった。

 

年度末の平日にも関わらず、K君+K君のパートナーのSさんとT君、Yさんと飲み。久しぶりにリラックスしてみんなで楽しく宴席ということで、非常にリラックスして少々飲みすぎたくらいだった。冷静に考えれば非常に不思議なことで、もうみんな大学生ではないし、家族がいたり転職をしたりしている。自分はそして自営業者になろうとしている。でもまあ今自分がハマっているものとか最近の生活の苦労や楽しみのようなことを聞いたり話したりしていることがとても楽しかった。ただ何となく自分の中にあるのは、もう多分昔の話を懐かしむのもええやろという気分であり、新しい人も折角いたりするし、何ならいずれは誰かの子供とか友達とかパートナーが増えてもこういう場って維持できんのかなということで、別にそれは強制したいとかではなく、でもどうせなら新しい人が入ったときにも楽しく過ごせるような気持ちでいたいし、もっとそういう人がどんなんやったのかとかも知りたいし、出会ったのは4年制の私立文系大学生としてだけど、もう別にそんなのはどうでもよくなってるし、そんな人ばっかりじゃないということをお互いに分かりあう場でもあるといいのにという気持ちだったりする。そういうことに気付けたのは良かったし、自分がこれからやりたいことってそういうこととものすごく関係しているなという気持ちにもなった。話の流れで、フィクションについての捉え方という話をして、「でもそれはフィクションだから」で許せることって自分の中でめっちゃ少ないんじゃないかって気持ちになった。もっとそれを明確にしたい。嫌いなものへのいちゃもんなのか、本当にそれを嫌いな理由が言語化できるのか。

本当に楽しくて楽しくて、別れ際が悲しくって、なんでおれはこうなってしまうんやという気持ちで凹みながら帰路についた。もし本当に自分の願いがかなうなら、こういう楽しい夜がこの後の人生にもそれなりにあって、そのうちの一つではみんなが、あの日会えなかった友だちみんな(それは誰かの友達だったり親せきだったり、こどもだったり、孫だったり、誰でもいいけど)がいる時間があったらいいのにって本当に本当に本当に思った。めちゃくちゃわがまますぎるけど、そんなわがままが叶う時間があってくれたらもう少し人生のこと好きになれるのに。

 

商工会議所にメールを入れ、今後の段取りを考える。送られてきた資料に書き込む内容は決まっているはずだったが、いざ考えると、この前の飲み会で自分が本当にやりたいことが見えた気もして、本当にやりたいことがわからなくなる。最初に噓をつくともう多分後には戻れない気がして、自分が見つけたような気持ちを探していると、家がなくなってしまうことや、なんやかんや現在の役職のまま次年度が始まろうとしていることなどのもやもやしたことが頭を覆い、また見えなくなってしまった。そんな言い訳をしている暇はないはずなのに。

 

本はいろいろ読んでいたはずだけど読んだ本を実家にいったん送ってしまったので、よく覚えていない。「VIP グローバル・パーティーサーキットの社会学」めちゃくちゃおもしろかった。おんなじクラブでも話が違いすぎるのが単純におもしろい。当然女性の搾取構造があり、プロモーターたちに対する搾取構造もあり、何重にもわたる搾取構造の中でそれぞれが騙されているという単純な話ではなく、それぞれの中にはそれに納得していたり、そこから飛躍を試みようとしていたり(実際にはそれはいろいろな理由でほとんどの場合難しいのだが)。ストリートとも厳密には言う感じでもないけど、こういうところを参与観察するというのはおそらく非常に難しく、それだけでも意義のある本だなと思った。

「レイヴ・カルチャー──エクスタシー文化とアシッド・ハウスの物語」をよんだ。こちらも長くて時間がかかったが、とても面白かった。レイヴがここ2,3年で日本でも盛んに言われるようになってきている。この本を読むと、コロナのストレスから抜け出すという意味で、既存の言葉で近しい意味の言葉として注目されているんだろうなとあらためて感じる。実際のレイヴの精神性みたいなもの(そもそも精神性というよりは一部にはあきらかにEの存在が大きかったわけではあるが)を追求するというよりは、野外で大音量でパーティーすることが「レイヴ」として受け継がれているような昨今、あらためて起源を噓か誠か定かではないと思わせるほどの突拍子もない話の数々は刺激的だった。そのころイギリスにいたら自分もどこで開かれるかわからないレイヴを目指して高速道路を右往左往していたんだろうか。

小沼理「1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい」を寝る前に少しずつ読んでいる。あの頃の今も少し残るちょっとした他人との温度差や気持ちの違いがよみがえる感覚がある。よみがえるというよりは、徐々に見えないように自分で変えているだけかもしれないけれど。性的マイノリティとして生きる、という感じでもなくて普通に生きているだけなのに、時折それを強く意識させる社会や政治への言葉にするのが難しい感情はおそらくとてつもなくリアルであり、同時に自分はこの人たちに諦められないように生きていけるだろうかと考えてしまう。文章がとてもさっぱりしていて好き。

2023年2月

仕事が長引いている日に友人K君から渋谷にいると連絡。その日に連絡されてもと思いつつ、今から渋谷で飲もうと言われて断るわけもなく、急いで仕事を切り上げて向かう。こんな時間に電車で繁華街に行くということも滅多になくなって、なんだか不思議な高揚感があった。昔に二人で行ったカタラタスという渋谷のビアバーに入店。

聞けば今の職場の研修ということで、辞めるというのに研修に行かせてもらえるとは会社での彼の可愛がられぶりが伝わる良エピソード。4月からの新生活に向けて準備をしているようだが、家が決まっていない不安が大きいようだった。しかし、彼の野心というか、やっぱりまたそこで勝負したいという気持ちには敬服する。真逆の決心をした自分を恥ずかしく思いながらも、自分もそれなりに考えた結果なのでもろもろを伝える。彼の最もよいところは嘘がつけないところだと思う。誰が何を言ってきたとしても、自分の中で疑問に思ったりしたことは必ず口にする。それが嫌な人もいるのかもしれないけれど、自分にとってはとてもありがたい。

THE FIRST SLAM DUNKがやはりやばいらしく、店員さんも交えてそのあたりの会話も一通り盛り上がる。本を読むことをまた始めたということで、SF系を何点かお勧めするなどして終電ギリギリで解散。楽しかった。友達と話すのはいつでも楽しい。

 

健康診断のため、新年初出社。特になんということはなかった。健康診断が午後なので水しか口にできず日中はずっとストレスが溜まっていた。健康診断はつつがなく進む。体重は前年よりも落ちていて、ダイエットというほど気を遣っていないが、それなりに生活を変えた意味くらいはあったのかもしれない。

後日届いた結果では、肝臓の数値も回復しており安堵。

 

配信で「三軍の金帯」を見る。三遊間は最近ちょくちょく見かけるけどおもしろい。とてもいい距離感のユニットライブで今後の発展が楽しみすぎる。軍艦の仁氏が楽しくなって本ネタ前にめちゃくちゃな尺しゃべってるのマジ好き。

 

一度実家に帰って正式にいろいろ話しておいた方がいいかと思い、有給休暇を使って帰省。なんとなく恥ずかしくて親には伝えずに帰った。当日はよりにもよって東京でさえも雪が舞う寒さで、東北新幹線から降りると仙台駅には当然のごとく雪が積もっていた。仕事上どうしても出先での作業が一瞬必要になるため、パソコンを2台持って歩くのはしんどかった。

雪が積もっている中、仙台の「ボタン」という本屋に初めて入る。短歌や詩を中心に、人文やzine、アートも充実している。静かな佇まいと、雰囲気によく合ったラインナップという感じ。現金の持ち合わせがなく、何を買うかかなり吟味した結果、永井祐「日本の中でたのしく暮らす」、榎本空「それで君の声はどこにあるんだ?」を購入。前者は別の歌集をもっていたので知っていたが、後者はなんとなく表紙に惹かれて買った。

その後、「火星の庭」に行く。名前は知っていたが、こちらも初めて。いろいろな古本が並ぶ中で、カフェスペースのようなものもあり、居心地がとてもよさそう。「仙台本屋時間」という、仙台市内の本屋や本が読めるスペースに関する本を購入。読むのがかなり楽しみになる。

雪の中歩いていて指輪を道端で落とした。指輪は雪に埋もれて肉眼では発見できなくなった。絶望した。何度も落としたと思われる位置で足を動かし、引っかかるものがないか探したけれど、何度やっても同じことだった。悲しかった。こんなところにこんな寒い日に来て何をやっているんだろうとみじめになった。それでも気をとりなおさないと本当に泣きそうだったので、地図に従い「曲線」に行った。こんなところに本屋なんかあるのだろうかと不安になりながらもそこにはあった。こちらはエッセイや詩・短歌多めながらも海外小説を中心にいい感じの品ぞろえ。3店とも重なる問題意識と異なる力点が浮かび上がってきておもしろい。悩んで「マンスフィールド短編集」と山田亮太「オバマ・グーグル」を購入。後者はまた読んだことのないタイプの本でかなり楽しみ。詩集ということにはなるのだろうが、イメージする詩集とは少し違う。そういう難しそうなジャンルが少し手を伸ばしてくれているような気になる本が好きだ。

買い物を終えて、あきらめきれずに指輪を落としたあたりに戻ってまた探す。何度か足を動かすと何かの感触が。指輪だった。泣きそうだった。なんとか見つかってもうこれで今日はおしまいでいいやって思った。おしまいで言い訳はなかった。新幹線で重い荷物をもって移動して本を買ってさらに重くなって終わりの訳はなかった。

事前に親に言っていなかったので、親が出かけていて地元駅でやむなく30分ほど待機していたがどうにも凍え死にそうだったので、一縷の望みで倉庫を漁ると自宅の鍵を見つけて入って待った。親は急にこの年になった長男に無言で帰省されるより怖いことはおそらくないだろう。親になったこともなければこれからなる予定もない自分でもそれだけはわかる。犯罪を犯したわけでもなく、仕事をばっくれたわけでもなく、これから心中するわけでもないことと、自分がこれからやろうとしていることをゆっくり話した。話したからそれが成功/失敗するわけではないし、彼らから借金をするわけでもなく、しかるべきところから借金をするわけだから、「はあ、がんばれよ」くらいしか言うこともないだろうと思っていたが、案の定そうだった。

2日間何をするわけでもなく、買ってきた本を読み、次に向けた準備を少しずつ進めた。これからどうなってしまうのだろうか、なぜ自分だけ兄弟の中でこんなことになってしまっているのだろうかという不安や虚しさとやりたいことがあってよかったという安堵とやりたいことをやったらどうなるんだろうという期待と、すべてがぐちゃぐちゃであんまり楽しいことを考えるのは難しかった。頭の中ではなぜかずっとシャムキャッツ「AFTER HOURS」が流れていた。

新幹線が東京に着くころ、母親からは現実的な心配と発破を送られ、父親からは無理だけはもうしないでくれという自分が生み出してしまったものへの責任と後悔のような文章がほぼ同時に送られてきた。一度本気で自殺しようと思って知らない海に入ったときのことを思い出した。あの時に死んでいた方がよかったのか、死んでいなくてよかったのか、いまだに自分ではわからない。

 

仕事が中途半端な間に辞める辞めないの話をしてもいいことはないので、3月に入ってからにしようと決めて、とりあえず日々をやり過ごしている。アトロクのMCU5直前特集を聞き、いよいよ本気でみないとまずいかという気持ちと、映画にテレビシリーズに本当にいろんなものがたまっていて、こんなもん今から手出すやついるのかよと呆然とする気持ちもある。

水曜は午後休をとり、丸福に向かうも臨時休業。仕方なく家に戻って適当に昼ご飯を食べる。こうなってはどこかに行くという気も特に起こらず、家でたまった録画を見たり本を読んだりするなど。忙しいのかなんなのかは正直微妙なところではあるが、こうなると休みもさほど楽しくはない。携帯が鳴らないかを逐一気にしてしまう。保険を解約した。短い付き合いだったが、いい経験だったと思うことにする。どっちみち今の保険を払い続けることは難しくなるので、県民共済を検討する。

 

土曜日、B&Bでzineのフェアをやっているということで向かう。相変わらず慣れない。面白そうな本がいろいろあり、想定よりもたくさん買ってしまった。久保憲司「スキゾマニア」、「メイク・サム・トリップス vol.1」、「Wintermarkt」「DISTANCE vol.3」、「巣」、「近代体操 創刊号」、「Witchenkare Vol.12」、「バル 第10号」、「つくづく別冊①トーク・ショウ スペシャル」、「MAKING Issue:00」。zineや小規模の出版物を買うか買わないかは、次が出そうかどうかと、見た目がzineやございという感じではないかどうかで決める。それっぽい見た目のものをまるっきり買わないわけではないけど、別に普通の本と変わらない内容なんだからどうせならパキッとした装丁で佇む者たちが好きだ。

アップリンク吉祥寺で「ケイコ 目を澄ませて」を見る。なんかもう世の中ってやっぱり最低で、でもその中に平気で自分がいて、それでもそんなことにガタガタ言わずに生きるしかない人がいて、それがまぶしくて、本当にまぶしくて、コンビネーションの練習を何度もコーチと一緒にやるシーンが美しかった。本当はただ好きなことをやりたいだけなのに、「目が見えない」ただそれだけで変なバイアスが生まれて、あるいは女であるということかもしれないし、とにかく別にそれは彼女がどこかで望んできたものではないものがただ好きなことに打ち込みたい気持ちをそのままではいさせてくれない。ジムが遠いからって理由だって、別に変な理由じゃない。あのあと彼女がどういう風に生きていくのかを映画は教えてくれない。でも、弟の彼女との楽しそうな時間や、ジムを畳むことになる前の最後の練習とか、あのジムでの最後の試合のあとに対戦相手と会ったときのこととか、なんかちょっとだけ希望をもってしまった。そういう誰かの希望を簡単につぶすのが自分かもしれないけど。

三鷹市美術ギャラリーで「合田佐和子展 帰る途もつもりもない」を見た。マジでやばすぎてひっくり返りそうだった。もともとは彫刻とコラージュのようなものを作っていた中であるとき家事や育児の合間で絵を始めてそれがもううまいとかなんとかというレベルではない。写真をもとに書いているのだけれど、写真とは多分違うんだろうなというような力が絵からほとばしりすぎているのが素人でもわかる。こんな絵はちょっとうまいとかなんとかではきっとかけない。そのあとのエジプト行ってからのスピリチュアル体験的なものを得てからのは芸術過ぎる。前半は「絵がうまい」「模写がうまい」みたいなことでおさめることもギリ可能だと思うけど、後半は絵そのものよりもそれがまとう空気とか世界みたいなものが飛び出してきてる。あんな物描けたらそりゃ普通の人が見えないものだって見えるだろうし、実際見て体験したんだろうなと納得する。めちゃくちゃなものを見た。

 

翌日、Twitterで知った「EASTEAST_東京」という展覧会というか、ギャラリーやら本屋やらアーティストが集まった催し物に行った。昔にちょっと大きめだけどナードっぽいテイストのクラブイベントに行った時のような感じがした。みんな自由に自分のところで各々みせものしたり友達と思しき人と話し込んだり。服はどこかみんなおしゃれで自分が少し小さく感じる。並んでいるものはどれもおもしろくて、展示は購入可能なものもあったが、さすがに金がない。Stacks Bookstoreの作品集がどれもかなり良くて、一冊購入。こういうのは見ていて飽きないし、気に入った作家は個人的にフォローできるし、非常に良かった。実店舗もあるようで見に行きたい。

その後、調布パルコで開催されていた古本市に行く。昔のSTUDIO VOICEとか集めたくなったけどグッと我慢し、ロベルト・ボラーニョ「売女の人殺し」「通話」、保坂和志「小説の誕生」、平山亜佐子「問題の女」を購入。すべてハードカバーでめちゃくちゃ荷物が重くなりやや後悔。どれも読みたかった本だったのでよしとする。

 

朝から早めに起きてバンダラランカで昼ご飯。プレート1つしか選択肢がないので迷わなくてよい。久しぶりに食べたらどの要素も思っていた倍辛かった。あまり悟られたくないので、口元に運ぶまでのインターバルを長めに置いて、さも優雅な昼食を楽しんでいるかのようなふるまいをしながらおいしくいただいた。

徒歩でAマッソ「滑稽」を見るために草月ホールへ向かう。1本目の漫才で言っていたが、草月ホールは思っているよりも手前にそれらしきものがあり、一瞬不安になる。そして最寄りのセブンイレブンからも思っているより遠い。中身はいわゆるネタバレ云々系なので書かないが、ホラー的なものと笑い的なものって相性いいように見えて、やりすぎると途端に悪趣味系になるが、「笑い」自体をテーマにしているのでその辺うまくとりもてているような。最後の漫才が変化して聞こえてくるあたりは、完全に意味をつかめないながらもゾッとする気持ちと同時に大爆笑してしまった。SNSでは賛否があるようで、お笑い見に来た人からするとまあ言いたいことがあることもわからなくはない。新しいものを見たから満足となんでも言うほど軽い人間でありたいとは思わないが、ライブでやるとしたらリアルにゾッとしつつ、ネタでは笑いたいよなあという欲張りな客を満足させるものにはなっていた気がする。終了後に日清食品から「完全メシ」のサンプルが配られていたが、どう考えてもメシのサンプルを配る系のライブではないので、個人的にはここが一番怖かった。

銀座のガーディアン・ガーデンで『光岡幸一展「ぶっちぎりのゼッテー120%」』 を見た。というか、喰らったに近い気がする。Twitterでフライヤー画像見て気になって行っただけだったけどマジで行って良かった。ぶっちぎりで最高。ものが転がったり動いたりする映像にアテレコしたものが流れ続ける中、突如作者が弾き語りをしてみたり、急にキックペダルをジャンプして思いっきり蹴ったりして、モニュメントが光の当たり具合で変わって空間全体がやけに幻想的だし、ほとんど夢みたいな気持ちになった。ここにずっといて映像と光の移り変わりと音聞いて過ごしたかった。多分今年これよりもおもしろい展示見る可能性ないと思う。

 

翌日、起きるとかなり歯医者に間に合うかギリギリの時間。それでも歯を磨きなおして風呂に入るくらいはしないといけないという、見る人が見たらのんびりしてるくらいの感じで動き始める。一応駅まではタクシー使った。歯医者で言われたことはいつも通り。ちゃんとしないと本当に簡単に歯周病になるっぽい。

歯医者終わりでフジコミュニケーションで昼食。席で勝手にメニュー見て注文して勝手に会計できるのが1人で行くにはちょうどいい。相変わらずどれもおいしかった。

近くに移転したのを知り、コ本屋に初めて行った。アート系のパンフレットや作品集が充実していて見ていて楽しい。人文系も古本を中心にそれなりの数があって、バランスがよいというか、どっちかを目的に来た人が別の方に興味をもつ事を誘発するようなラインナップ。会計中に見つけた雑誌の花椿がほしくなったので、今度買いに行く。飯沢未央「somebody's room」、Kei Isono「uni」、「ことばと Vol.3」を購入。

 

下北沢に移動して「サポート・ザ・ガールズ」を下北沢トリウッドで鑑賞。めちゃくちゃおもしろかったけど、なんか管理職もどきみたいなことしている身からすると、こんなんあったらもうどうしようもないやんみたいなことの連続をリサがめちゃくちゃに奮闘(結果円満解決ではない)している姿は泣ける。ベース面白いけど、実際にある年齢とか性別とか職業とか人種とかそんなんをごちゃまぜにした問題や葛藤を確実に描いていて素晴らしい。それらが単独で問題になっているくらいならだれも苦労してないし、ましてそれがしわ寄せにされる属性があるということ。もっと多くの人に見られたらいいのに。最後の終わり方も素敵だった。

 

有給休暇を使って貯水葉にルーローハンを食べに行く。墨田区なんてほとんど行ったことないところにルーローハンを食べに行くとはいい身分になったものだと感慨深くなる。こんな下町にしだがきれいなルーローハン屋さんがあるというのは異質ながらも心地よい。運ばれてくると意外と小ぶりに感じたけど、めちゃくちゃおいしくて大満足。ちかくのあんみつ屋さんは休みだったので、そちらも合わせてまた来たい。食べていて途中でレンゲを3つ重ねてとってそのまま食べていたことに気づいたが、どうすることもできずにごめんなさいという気持ちと恥ずかしさのみが残った。

浅草駅まで歩く。桜橋は渡らずに、隅田公園の方に向かって歩く。川を見ながら歩くのが好きだ。別に何かを考えてもいいし、水だけ見てぼーっと歩いてもなんか気持ちがまぎれるし。すみだリバーウォークを渡って向こう側に移動した。川の近くに住んでみたい。

 

久保憲司「スキゾマニア」、「メイク・サム・トリップス vol.1」、「Wintermarkt」「DISTANCE vol.3」を読んだ。どれもおもしろい。「DISTANCE」は次で終わりらしいけど、こういうのこそもっと続いてほしいし、別にこれは都市生活者に限ったものではなかったりするので、各地でこんなんがあってもいいのにって思った。

乗代雄介「最高の任務」を読んだ。日記とか手紙という形式がどういう意味を持ってくるのかというのは、町田康の解説も読むとまたおもしろい。あいかわらず回りくどくてやけに賢くて見透かされるような気分にもなるけど心地よくて繊細でそこは弱いんかいと言いたくなるような登場人物たち。「最高の任務」の方の家族が特に好き。

武塙麻衣子「頭蓋骨のうら側」を読んだ。氏の1年間の日記シリーズはこれで最後。どれも素敵な家族とおいしそうなご飯と楽しい映画の話が詰まっている。でも、生活の端々がコロナやちょっとした心の中のざわめきで変化したりすることも書かれていて、寝る前に読んでたけどそのころ自分ってどうだったっけと振り返ってしまったりして、それもこの本のおかげだなと思いました。

思いつき短歌など

たまに更新されたりします。

 

お前には書けないことを書いてるさ「俺みたいだな」と誰かが言っても

君の声知らぬ街から鳴り響く1人の休日1LDK

昨日との違い?宇垣さんがしゃべってるから今日は火曜

痛いのはアレやしするなら入水かな、あの日もそう決めたはずなのに

借金は結局おれがするもんで、好きにやるからもう現れんな

「ズレた間のワルさもそれも君の"タイミング"」ってわけでここは1つ

「それってさ、キダムの小倉さん的な?」多分そうかもよく知らんけど

「ラジオ好き」そんなん多分もう普通やろそれ売りにして幅利かせんなや

邪魔すんな俺の生活邪魔すんな、お前の生活?知ったことかよ

「よく考えた」「意図はなかった」「気持ちに正直」ああそうですか、でも差別だよ

新500円玉ここでも使用不可デービーバックファイトみたいだ

kawaiiでごまかしてきたものの、気に入らないFuture Bassと言えば良かった

自意識がやっぱり可愛くならなくて、それもまたかわいい、いや単にキモい

「何様のつもりなんですか?」何様ってわけじゃないんですがあのえとあのはい

短歌とかそういうもんに押し込めていいものなんてたかがしれてる

そういうのは広い公園とかで話してここは居酒屋、あとあなた誰?

今だけは流れてこないでほしいのにtofubeats「window」が

タコス屋が選挙事務所に変わるとき君を振り切り世界が変わる

言ったとてただそれだけと分かってもなお口から出る「助けて」と吐息

それでさあ、結局何がやりたいの、恵まれた君のその立場からなお

知らないから、そう言い訳して見ないふり、それって本当にみんなものなの?

大事なものは増えても減ってく、大事なものは減ったら増えない、keijuの言葉が芯を突く夜

「もし君とあの時結婚していたら」くだらんことを考えるなアホ