【音楽妄言多謝】Jersey Clubで飯は食えるか -NewJeansの喧騒の外でテン年代のインターネット音楽の一部を振り返る-

シリーズ化するかはわかりませんが、音楽関係の話をしたくなったのでします。

【音楽妄言多謝】と銘打った書き起こしです。その名の通り、出まかせだと思いながら読んでください。間違って本気にした人は、まあそれはそれで夢を見たと思うくらいでいいと思います。文責は以降全てTKMRになります。

なお、このブログでは基本的には(一部を除き)すべて今インターネットで聞けるものしか記載しないルールにしています。あれがないこれがないはおっしゃる通りですが、聞けないものの話をされてもというのはあるので、その点はご了承ください。

なお、Youtubeについては、動画管理者側により、埋め込み上での再生が許可されていないものは、一度Youtubeに飛ばされるクソ仕様になっているので、その点もご了承ください。

 

■人物紹介

・TKMR:このブログの人。

・KSMN:TKMRの友人。音楽が作れていろいろ知ってる。

 

TKMR(以降T):書き起こしなので自己紹介もいらないかと思って、とりあえず録音開始したんですが、考えてみたら、これからどこの誰かもわからないやつがこれが開示されるころには話題ですらなくなっている「NewJeansおじさん」になると考えると怖いですね。

KSMN(以降K):そもそもどこにこれを載せるかって話もありますよね。

T:noteは思想が合わないので無理なんで、そこはまた考えるとしまして。

T: 急に渋谷にKSMN氏をはるばる召喚して何を話し始めるかというと、Jersey Clubあるいは、それ的なビートを最近本当によく聞くなと思うと、30代にもなると黙っているのもなかなか苦しい(笑)

K:そういう音楽がマジョリティの人の耳にも入ってきてる状況にあるってことですよね。

T:そうですね、流れてるってことはどこかに需要があるわけで、そうすると、なんかみんな好きだったんだって言うのがまず第一の感想としてはありまして。

K:あれですか、好きなバンドがメジャーシーンに行く的なものの、でかい版みたいなやつですか。(笑)

T:まあ、そんなやつかもしれません。(笑)Jersey Clubって言われても、そもそもそれを知らんがなというくらいサウンドだけが当たり前になっているので、どういうものが該当するかというと、最近の流行歌では、NewJeans - DittoとかPinkpantheress - boy’s a liarなどの、1小節にキックが5回鳴るのが特徴的なビートですかね、めちゃくちゃ簡単に言うと。

K:NewJeansに関しては、2nd EP収録のETAも同じような感じに聞こえるかもしれませんが、Bmore(Baltimore Club)感が近いと思います。

T:なるほど。ちなみにNewJeansは250(イオゴン)の作曲・編曲。後者はMura Masaのプロデュース。

K:あの Mura Masaが。

T:おそらく休みの日になんとなく作った、あるいは数年前のプロジェクトを引っ張り出してきたのではとも言わざるを得ないスカスカビートでお送りしているという。いやまあ共同プロデュースなんで、どっちがビートを作ったかは知りませんけど(笑)

K:まあ、素晴らしい(感嘆)。ただこれスカスカってのは褒め言葉ですからね。スカスカで成立させる方が難しいんですよ(笑)

T:まあ、NewJeansの話はここで終わりなんですけど、そもそもJersey Clubみんな好きだったんかいってことと、それってアトランタベース・マイアミベースの流れからきてますよという丁寧な解説なども見るわけですが、「本当か君ら?」と。そこまで遡った話なのってことを僕個人としては結構思っていて。

K:まぁ、そういう意見に別にそんなに異論はないですよ。ヒップホップの文脈で語るときは2Pacから語らなければいけないみたいなのですよね、要は。

T:Jersey Clubの最近の流行に関して言えば、印象的なのはCookiee Kawaii - Vibe ( IF I Back It Up)がありますが、2022年リリースのDrake - Stickyがやはり大きく、近年のこの流行はヒップホップから始まっているんだという話も聞きますね。まあ、ヒップホップはもともとそういう新しいものを生み出す文化ということはあるんですけど、Drake,Drakeとね。。。いや、Drakeは偉いですよ。

Cookiee Kawaii - Vibe ( IF I Back It Up)

Drake - Sticky

とはいえ、もうちょっとなんかあるんじゃないですかね、ていうのが、特にテン年代に渋谷のクラブに行ってた(特にclub asiaやLounge Neo)人たちからすると違和感あるんじゃないのと。もうおじさん語りですけど。

K:老害ですかね。

T:まあ、老害ですわ、われわれも。とはいえ、一個もそれに触れてない、触れてる記事が観測できないのは疑問です。そんなにいっぱいミン・ヒジンのことが調べられるんだったら、とっくにたどり着いてますよねって気持ちにもなるわけですよ。もちろん、プロデュースに関して書きたいならそれでいいかもしれませんが、音楽分かったうえで好きですよみたいな感じのスタンスなんですよね、全体的に「批評」とか「分析」の体裁で書かれているものって。もちろん、それらについて書かれているものがないとはいいませんが、それもミン・ヒジン起点なのかなと。いいんですけど、別に。そういう裏側カルチャーが求められているんだと思うし。

K:ミン・ヒジンは、00年代にSMエンタテインメントでうんぬんかんぬんみたいなやつですか、それは。

T:そう。そこまでリサーチできているわりには、音楽的にはこれの参照元がおそらくこれだろうみたいなことには、もう調べがついているんではないですか?って気持ちにもなるんですよ。単純な疑問として。NewJeansが「新しい」っていう前提に立っていると、そういう話は出しづらいのかもしれないですけど、「新しい」のかどうかも本質的にはよくわからないというのが僕の現時点での理解です。

K:まあ、そうですよね。

T:で、そうなると、あなたはじゃあ一体何が好きな人なのって思っちゃうんですよ。

K:うーん、K-Popなんですかね。

T:その辺がいまいちよくわからない。たとえばビジュアルならビジュアルだという記載があってもいいはずだけど、それもそんなに見ない。NewJeansに新しさを見出すことってそんなに大事なことなんですかね。現に反証のようなリアクションも結構見るわけで。食い扶持探すってのはそういうことなのかもしれないんですけど。

T:ちなみに、K-Popが好きな人が書いた「本物」の記事は先にもうあるので、リンク貼ります。記事に勝ち負けはないですが、基本的にそこには全てが網羅されているし、記事の筆者はクラブ文化にも精通していて、R&BからJersey Clubへの流れみたいなものもきちんと書いてある記事なので、2021年当時とはいえ、すでにここで完成していると僕は思っています。

 

www.cyzowoman.com

※なお、なぜこの連載が途中で終了しているのか、載っているものを本にまとめることになっていないのか、ということに対して、誰に何をぶつければいいのかという不満は大いにあります。筆者が断ったうえでそうなっているのならばやむを得ないと思うのですが、、、とはいえ他ジャンルの回も含めて、これよりも充実したK-Popの音楽的分析記事は現実に存在していません。(断言)

 

T:そのうえで、先ほどクラブでの経験みたいな話もしましたが、こんなにみんなJersey Clubでわらわら騒いでるってことは、飛躍すると「え、もしかして、みんなDiploめっちゃ好き?」ってのが僕の思ったことなんですよね。

K:飛躍してるなあ(笑)DiploといえばSoundcloudが好きで、自分の曲のRemixをパトロールしていいねして回っていたという、あのDiploですね。

T:なぜDiploが出てくるのかというと、NewJeansの2ndのリファレンスとおそらく考えられるEPとして、LIZ - Just Like You EPがあると思っています。当時はフリーダウンロードでこれがDiploのレーベルのMad Decentからのリリースでした。(注意:今は404で落とせない)楽曲はもちろん、各プロデューサー見てもフリーではあり得ないクオリティですね、今考えたら。

K:クオリティ高いですね。

T:この仮説からいくと、なんだみんなMad Decent好きだったんじゃんって思うところもあり、Diplo過小評価説はちょっとあるかなと思い至ったわけです。

K:なるほどなるほど。

T:では、ちょっと曲を聞くパートも入れましょうかね。まずは、話の始まりということでNewJeans - DittoとPinkpantheress - boy’s a liarですかね。

 

NewJeans - Ditto

Pinkpantheress - boy’s a liar

 

K:感想としては、Dittoに関してはスキャットが素晴らしいですね、特に。

T:boy’s a liarに関しては、単純なループを歌の力で最高にするという、ほとんどどうなってんねんってくらいに歌ですね。

K:boy’s a liar好きな人は、ぜひMura Masaの最新のアルバム「Demon Time」を聞いてほしい。

T:個人的には、見せたい場所が全然違うというか、強度のポイントが個人とこのプロデュースでは違いすぎるところも頭一つ抜けているところかなと。

K:「Demon Time」の中では特に「bbycakes」というLil Uzi VertとPinkpantheress、Shygirlとやっている曲が素晴らしいです。

 

Mura Masa - bbycakes with Lil Uzi Vert, PinkPantheress and Shygirl

 

T:PinkpantheressはMura Masaのプロデュースがいくつかありますね。とはいえ、Mura Masaプロデュースに限らず曲も多様で、2Step系もあれば、Jungle系の曲もやっていて、どれも僕は好きですね。

T:両方の感想として共通で出たのは「とにかく音数が少ない」ということですね。

K:そうですね。

T:過去に我々がSoundcloudに夢中になっていた、クラブによく行っていた2015~2018くらいのころから考えると、同じJersey Clubでも違和感というか、隔たりみたいなものを感じています。理由はおそらく、当時は聞かせるボーカルがなかった、つまりぶっこ抜きでのBootleg合戦だったので、元の曲を聞かせる方向ではなく、サンプルやらシンセやらを足しまくって、いかにおもしろくできるか合戦になっていたのかなと思うんですよね。

T:ちなみにNewJeans,Pinkpantheress関連で思っているもう1つの疑問としては、後でやりますけど、原曲でJersey Clubをうまくやっているものも最近は結構リリースされているのに、それらが過小評価されてること、あまり関心持たれてないことってのもありますね。結局このNewJeans等々をめぐる喧騒に関して、特に2nd以降は、仮にいわゆる「楽曲派」的な何かが持ち上げているのだとしても、その音が好きなのか、他の何が好きなのかが、いまいちわからないってのが気持ち悪いってのが感想としてはあります。
(注:話の中にあまりおさまらかったので、最後に音源だけまとめて記載しています)

T:話がかなりあちこち動いているんですが、改めてアトランタベース文脈の話も少し振り返ってみるかということで、アトランタベースでいうと、異論は多少あるかもですが、おそらく一番有名な曲としては、Ghost Town DJ’s - My Booがあるかと思っています。

K:おそらくですね。ポップスの中では、アトランタベースやマイアミベースを取り入れた曲で有名なもの、それこそMariah Carey - H.A.T.E. U (So So Def Remix)とかもありますし。でもまあ、My Booでいいとは思いますよ。

T:My Booはさすがに聞かなくてもわかるということで、当時とても聞かれていた、Wave RacerによるRemixを聞いてみようと思います。これ、Wave Racer自身はSCから消しているので、ネットで今聞けるのは違法転載ですね。

K:あれ、Cosmo’s Midnightじゃないんでしたっけ?

T:Cosmo’s MidnightはDestiny’s Child - Say My NameのRemixですね。まあ、同じような感じですけど。

T:ちなみに自慢になってしまいますが、僕はDLできる期間にDLしたので、ここで流すものは、話題の「割れ音源」ではないです。

※以下は無断転載なので、再生は推奨しませんが記載はしておきます。

 

Ghost Town DJ's - My Boo (Wave Racer Remix)

 

T:耳にタコができるくらい聞いたって感じですかね。

K:そうですね。20歳くらいですか。

T:年齢差あるので、僕はもう少し年とってましたけど。(笑)感想としては、さっきの2曲聞いた後だと、サンプル多い、シンセがバンバン入る。

K:かわいい。

T:そうですね。でも、なんかこれ系に近いかというと、ちょっと微妙な感じもする。

K:そこで、遠い昔の記憶をもう一度たどったと。まあ、実際はたどるほどもなかったわけですけど。

T:250のインタビューで、「Mad Decentの、テン年代の曲を聞いている」という話があったので、そこから連想されるのが、さきほど話に出したLIZですね。LIZのJust Like You EPから「Y2K」という曲ですね。プロデュースはLido。前半部分はFuture Bassですけど、後半部分のJersey Clubの感じになってからは、歌で聞かせるような、今の流行の感じにかなり近いなと思います。全然サンプルでごちゃごちゃしてないし、スムーズ。

K:ただ、なんかやっぱりLidoのプロダクト感というのが出まくってるので、丸パクリはできないとは思うんですけど。

T:そうですね。ただ、NewJeansやPinkpantheressの曲を作った人たちのリファレンスにはあっただろうなというか、聞いてはいただろうなというのはありますよね。

K:なんなら僕はNewJeansに関しては、2ndEPはこのEP全体を完全にリファレンスにしてると思ってますけどね。

T:それでいうと、Pinkpantheressも2Stepの曲あるけど、それもこのLIZのEPに入っている「Do I Like You」という曲が多少のリファレンスにはなってるかなと思いますね。

T:この中からあらためて、ではLIZ -Y2Kを聞いてみますか。

 

LIZ - Y2K (Prod. by Lido)

 

K:感想としては、まず「Lidoだなあ」ですかね。とはいえ、やっぱり似たような雰囲気はありますよね。

T:冒頭のスキャットもそうですし。これ誰も言ってないのマジで謎だなあと思うんですが。Twitterで1人外国の方が言ってるくらいですかね。

K:「LIZのEPとNewJeansとPinkpantheressってすげえ似てるよね」っていう1つのポストだけ。

T:まあ、NewJeansの話を今日本語圏ですると結構だるいので、それで言ってないって人も一定数はいると思いますけどね。

K:どの方向からでも何かしら言われる可能性が高いですからね。

T:でも、そのこうやって振り返る中で、250のインタビューではないですが、「もっとMad Decentって評価されててもよくない?」ってことはやはり思っていて。クラブ好きは結構好きだったのに加えて、それこそ「Harlem Shake」とか世間的に影響力はあったとは思いますが、とはいえ、20年代の音楽を見ていく上でも重要だと言えると思いますし、早かったものが多かったのかなとは思うんですよ。

 

Baauer - Harlem Shake

(追記:個人的には「Baauer」の最高の仕事はいまだに「Aa」だと思っています。「Planet's Mad」も好きですが。)

T:まあ、あと今結構みんなUK大好きでしょ。

K:UKドリルとかね。北欧のプロデューサーとかもそういう感じあるし。

T:みんなここ最近は「2-Step」「Gagage」「Jungle」とか。まあ、なんでもいいんですけど、2020年くらいから、クラブ行ってた人たちはぶっちゃけJersey Club飽きたんですよ。

K:そうですね、なんか食傷気味というか、お腹いっぱいというかね。

T:2019年くらいからそれであのジャンルは放っておかれた感じがあって、全員がイギリスに行った気がします。レーベルでいえば、「Shall Not Fade」とか、ダメになりましたけど某レーベルとか。

K:それこそ、ハウスとかいいよね、みたいな。四つ打ちってやっぱいいよね、みたいな感じですよね。

T:こういう風に言ってると揶揄にも聞こえますけど、実際僕もかなりそういう音源買ってて、本当に好きですしね、今でも。あとは、国内的にはCYKやNC4Kのような洗練されたクルー・レーベルがそういう音楽をどんどんかっこよくやってプレゼンスを上げたということもあると思います。

K:僕も正直「もうJersey Clubいいよ」ってその時は思って「聞きすぎ」って感じはあったと思う。

T:2019~2020くらいからは実際徐々に個人個人が作りたいものを作るっていうフェーズになったというか、日本のプロデューサーだけではないけど、experimentalな音楽を作る人が増えたり、ハードハウスとか、UK系のサウンドにシフトしていく流れっていうのが、あったかなというのは思っています。

K:で、まぁ同窓会じゃないけど、K Bowさんが新しいのをリリースしたら、それはみんな楽しく聞く、チェックするみたいな感じですよね。

T:K Bowさんは、特にこのころまでの日本のJersey Clubの話をするうえでは欠かせない人だと思っていて、突出しているプロデューサーだなと思います。

K:それこそやっぱりもうテンプレートがあって、それを発展させていくみたいな感じらしいですよ。

T:ここでかけるのは、これではないと思いつつ、オフィシャルのリリースでは、JUBEE - Joyride (feat. SARA-J)のRemix。今から考えると、アーティストにとってもシーンにとってもちょっと早すぎたかなと思いますし、今改めて爆跳ねしてもいいものかなとは思います。

 

JUBEE - Joyride (feat. SARA-J)[K Bow Remix]

 

T:ということで、今更こんな話をして、何が言いたいのかってことなんですけど、結論としては、これは金になるのでは?ということですね。汚い話になりますが。もちろん、僕らが作るとかそういうことではなく。というのも、2〜3年飽きてたわけですよ。Jersey Clubから。そしたら、オーバーグラウンドでめっちゃ流行りそうだよ、気にしてるみたいだよっていうね。

K:ハウスにしてくれって話よりも、Jersey Clubにしてくれって話の方があるのでは、ということですよね。極端な話をすれば。

T:それこそ、音楽業界の方に「君もNewJeansに近い音楽を届けるアイドル、アーティストを作れるかもよ」というお得な情報です(笑)。

K:なんか、僕らが観測できてないだけで、全然あるんだろうなって気はしますけどね。

T:あるとは思いますね。地下ではないですし、むしろオーバーグラウンドで勝負している例としては、これも早いですが水曜日のカンパネラ - バッキンガムですかね。2021年のリリースで、ケンモチヒデフミ氏の作詞・作曲です。ビートはJersey Clubですし、サビではFuture Bassっぽい音色や、頭の方ではアトランタベースっぽさもあります。

 

水曜日のカンパネラ - バッキンガム

 

K:Future Bass感はアーティスト的な見せ方の部分も絡んでいるのかなと思いますが、ビートはJersey Clubですね。

T:日本人で、特にRemix以外の仕事でJersey Clubをやろうとすると、Future Bassっぽさが伴うというのも1つの傾向かなと思いますね。これは、より聞かれるためにポップな魅力が求められたり、その他もろもろの条件から来ているのかもしれません。あとは、日本人が意外と「うるさい」のが好きってのもあるのかもしれません。根拠はないですが、音数が多いと得した感があるというのは個人的にありますね。

T:今回の話をするにあたって、国内でリリースされているJersey Clubっぽい楽曲をリストアップしたものを見ていますが、どれもFuture Bass感はありますね。少なくとも、最初に聞いた2曲のようなスカスカ感はあまりない。このリストは恣意的ですが、おそらく日本で一番聞かれた、あるいはクラブで流れた、「Jersey Club的なビート」+「今言っているFuture Bass感」を持った曲はこれかなと思いますね。どちらかというと後者のインパクトの方が強いですが。とはいえ、当時は間違いなくどこでも流れていた記憶があります。

 

tofubeats - CAND¥¥¥LAND feat. LIZ (Pa's Lam System Remix)

 

K:tofubeats - CAND¥¥¥LAND feat. LIZ (Pa's Lam System Remix)ですね。今流れてもブチあがる人は一定数いますよね、やっぱり。

T:そういう意味では、Pa’s Lam Systemの存在が大きいですかね、やっぱり。代表曲で彼らの知名度を圧倒的に高めた曲であるI’m comingもそうですし。

 

Pa's Lam System - I'm Coming

Pa’s Lam SystemがJersey Clubのアーティストを自称しているわけではないし、本人たちはそんなつもりないし、そんなつもりで作っては微塵もないと思いますが、結果的にJersey Clubのリズムをうまく取り入れて、日本の当時のクラブで圧倒的に聞かれたアーティストだと思います。HyperJuice - City Lights Feat. EVO+ , JinmenusagiのRemixも印象に残ってますね。

 

HyperJuice - City Lights Feat. EVO+ , Jinmenusagi (Pa's Lam System Remix)

 

K:PARKGOLFのWoo Wooもよく聞いたなと思い出しました。あの曲自体が全般ジャージークラブではないですし、その後はFuture Bassだったり独自路線にすすんだアーティストだと思いますが、1つ大きな曲だったと言える気がしますね。

T:今作曲に参加されているアイドルの曲なんかはけっこうそういうテイストも入っていて、これもおもしろいなと思っていますね。

 

PARKGOLF - Woo Woo

 

ばってん少女隊 - 御祭sawagi

 

T:そもそも当時のJersey ClubがなぜあんなにSoundcloud中心に盛り上がっていたのかというのは、Trippy Turtleの存在が大きいですね。公言はおそらくしていないと思いますので誰とは言わないですが、有名プロデューサーの変名です。このアカウントが2013年にSoundcloudで90年代から2000年代のR&BのJersey ClubによるBootlegを出しまくりまして、数か月後にはDiploのBBC Radio1でやっていたDiplo & Friendsでmixが流れて、これはやばいというのが全世界的に広まったのかなと思っています。

 

 

T:その前でいうと、Cashmere CatのMirror Maruですかね。メジャーリリースでこの文脈からいくとまず最初に言及されるべきところがここになるかなと思います。

K:そうですね。一番大きな道標と言える曲なのかなと思います。

 

Cashmere Cat - Mirror Maru

 

T:この辺は実際の親交がおそらくあって、遊びで作ったりもしていたのかもしれません。

K:彼らのクルーのfofofadiのルールとして、名前の頭文字が同じというのがあって、Cashmere CatならCC、Trippy TurtleならTTという感じになっているんですよね。

T:日本だと、K Bowさんが1番最初に出してるのが2013年に安室奈美恵 - Baby Don’t CryのBootlegですね。

 

安室奈美恵 Baby don’t Cry (K BoW jersey remix)

 

ご本人がbandcamp消してるので聞けない音源も多いですが、個人的には、倖田來未 - 恋のつぼみBootlegは、今J-PopでJersey ClubのRemixやるなら、ぜひリファレンスにしてほしい1曲ですね。あとは、SKY-HI - 愛ブルーム (tofubeats ¥enternet-experience remix)ですかね、明らかにやりすぎてますけど。これはSpotifyなくて、当時iTunes限定リリースらしくて、今はYoutubeではshort.verだけ聞けますね。今だったら全然大丈夫かなと一瞬思いましたけど、ダメかもですね、もしかすると(笑)

K:そうですね、これは当時tofubeats自身も「今しかできない」って言って出したなんて話も見た記憶があります。

 

SKY-HI - 愛ブルーム (tofubeats ¥enternet-experience remix)

 

T:あとは、いろんなアーティストの変名とか所在不明のアーティストになっていきますが、それこそblu-ra¥ - Blu-Ra¥'s K¥SS0F1if3 (Reprise)。これはOriginal Love - 接吻のBootlegです。

 

blu-ra¥ - Blu-Ra¥'s K¥SS0F1if3 (Reprise)

 

T:fofofadiだとDrippy Dolphinはもちろん、あとはContent ID マンションなんかも一部Jersey Clubがあったかなという感じです。この辺は結構僕らの好きなところを抽出しているので、他にも本当にたくさんいろんなリリースがあって拾い切れては当然ないですが、この近辺でそれらがまとまっているので言うと、tofubeatsのDiplo & Friendsのmixかなと思います。

K:これは当時ダウンロードもできたんじゃないかな、多分。

T:これは日本人プロデューサー多めで本当にいろんな音源が入って、いったんは当時のMAXが出ているところなのかなと。趣旨から外れますが、mixの締めはいわゆる「クラブ」って感じの曲でないあたりも愛せるところだなと思います。

 

 

T:ちなみにこのあとにTrippy TurtleはMad Decentから完全オリジナルのリリースをするわけですが、これがあんまり跳ねなかった(笑)

K:そうですね、僕は好きなんですけど、やっぱりBootlegでやってるからこその良さみたいなものを感じていた人も多かったのかなというところはあると思います。

T:あとは、この話を始める時に出ていた話題でいうと、OWSLAというSkrillexのレーベル内のレーベルというかメディアであったNEST HQからリリースされた、DJ HoodboiのMiniMixですね。これも素晴らしい。

K:そうですね。当時のJersey Clubを聞くという意味では詰まってる感じがします。

 

 

T:NEST HQ自体は消えたので振り返れないんですけど。あと、K-Pop系だと僕が最初にアレ?ってなったのはNU'EST - Overcomeかな。Jersey Clubではないけど、BedSqueakが使われていて、こういうのもやるのかって思った感じですね。

K:Jersey Clubで使われる「キコキコ」というベッドの軋む音ですね。

T:そして、2016年に出たVDIDVSのEP「R.I.P.V.D.I.D.V.S.」はデカかったと思います。これは、みんなが「自分でも作りたい」ってなったきっかけにもなったような気がします。K Bowさんや今まで名前をあげていたような、いわゆるMaltine界隈プラスアルファのような人たちとは違う人が出現して、こういうおもしろい人がまだまだいるっていうので、よりそういう機運が加速したんじゃないかな。このEPの中で一番聞かれているのは、KID FRESINO - Special Radio ft.IOのBootlegです。

 

Special Radio (K BoW X VDIDVS Remix)

 

この曲はヤバい。K Bowさんとの共作です。原曲も今日改めて聞いてきましたが、原曲自体も相当かっこいいビートなんですよ。でも、これは原曲を壊してなくて、かつクラブで盛り上がる感じに仕上がっているなと思います。原曲部分のラップも美しく使っていて、本当にさすがですね。というわけで、今日の結論部分に行くと、これってオフィシャルでよくね?って話なんですよね。

T:年表も一応用意なんかはしていて、もう少し触れたい部分もあるんですけど、例えばSHINEE - PrismもGarageのいい曲ってのはもちろんなんですが。

K:これもBedSqueak使われてますよね。

T:そうですね、EXOのTempoもBedSqueakが使われていたり、K-Popグループのデビュー曲でJersey Clubが使われていたり、なんてのは、最初に挙げた参考文献読んでもらえればってとこですかね。

K:2020年から2021年くらいにデビューしたK-Popグループがやたら実験的なビートを多く使っていた印象があります。バイレファンキもあった記憶がありますし。

T:この辺はアンダーグラウンドが忘れていたころに、ひそかにオーバーグラウンドで何かが進行していたという点でもまだまだ振り返る余地がある気がしています。

T:そして、最初の話に戻るわけですが、2022年リリースの「Honestly, Nevermind」に収録された、Drake - Stickyです。

K:これがリリースされたときは、正直びっくりしましたね。

T:Jersey Clubの再流行のきっかけとも言われていますが、振り返ってからあらためて考えたときに、どうなんですかね。

K:うーん、どうですかね。。。

T:単純にみんなが「ああそういえばそんなんあったな」みたいな感じで作り始めたような気もしますが。

T:同年にはLil Uzi Vert - Just Wanna Rockがリリース。これもJersey Clubで、こちらはバイラルヒットしていますね。

K:今でもLil Uzi VertのSpotifyでは1番再生されてますね。

 

Lil Uzi Vert - Just Wanna Rock

 

T:そして、「boy’s a liar」があって、「Ditto」があって、というわけで、いやどこが金稼ぎなんだと、さっぱりそんな話にならねえじゃねえかということなんですけど、いやいやなるんじゃないすかってことで、Bootlegはオフィシャルになるんじゃねという希望もあるのではということなんですよ。さっきのSpecial Radioじゃないですけど。

K:なるほどね。

T:ここで一曲聞くのは、Peterparker69 - Flight To Mumbai (VDIDVS Remix)ですね。これ今は公式のRemix集に収録されているんですが、もともとはSoundcloudBootlegとして公開された曲なんですよね。どういうわけか、それが公式化していると。ちょっと聞いてみましょう。

 

Peterparker69 - Flight To Mumbai (VDIDVS Remix)

 

T:まあ、素晴らしいですね。これを聞いても、「いやでもとはいえ、むずくね?」と「奇跡だろ?」という話もあるかもしれないですけど、参考になるような事例も1つあるわけでして。読者の中には、いろいろと思うところがある方もいらっしゃるとは思うんですが、Future Funkというジャンルです。あのジャンルって、もともとはもろBootlegだったわけですよ。Bootlegの塊と言っていいでしょう。

K:存在自体が違法ですからね、言ってみれば。完全なアウトローの音楽です。

T:それがいまやどうですかと。とんでもないことになっていて、全てが公式リリースになる勢い。公式リリースの嵐。

K:まあ、食っていけてますからね、現実問題として。すごいことですよ。

T:ということはですよ。

K:あるだろと。

T:Jersey Clubからも食っていける道があるんじゃないかと。別に、Jersey Clubをずっとやり続けなくてもいいわけですから。あの人たちも、Future Funkを一生やり続けているようにも見えるけど、現実には別にそういうわけでもなくて食えていると。そっからいろいろ手を変え品を変え。

K:某フランス人のプロデューサーは、そっからBMW買えてるわけですからね。(笑)

T:そういうことですよ。だから、夢があるわけですよ。SoundcloudBootlegを出しまくっても、最後に拾われる可能性があるわけです。だから、1つは、飽きても作った方がいいかもしれないということ。

K:自分が飽きてたとしてもってことね。

T:結構前に作って、これは興味ねえなって思ったものも、リリースしたら意外とおもしろいかもしれんと。あとは、新曲は積極的にRemixしたらおもしろいことになるかもしれんということですね。最近だと、宇多田ヒカル - Gold ~また逢う日まで~ のTaku TakahashiによるRemixが出ましたけど、あれってJersey Clubですよね、要は。

 

宇多田ヒカル - Gold ~また逢う日まで~ (Taku’s Twice Upon a Time Remix)

 

K:あれは、宇多田ヒカルサイドから本当に依頼があって作られたのかは定かではないですよね。

T:まあ、経緯はわかりませんが(注:実際にはこちらのインタビューにて、いろいろ経由して宇多田ヒカルが依頼したということが明記されています。)、完成形を聞くとですね、Taku Takahashiにあれをやらせておくのは、ちょっと儲けすぎではございませんかという気持ちにもなるわけですよ。正直申し上げれば。

T:K Bowさんが作る未来もあれば、VDIDVSさんが作る未来もあれば、近いところでいうと、pìccolo君が18年に作ったRed Velvet - Russian RouletteのBootleg、あれ尺短いんですけど、あれでいいと思うんですよ。彼はもうJersey Club作ってないし、興味ないかもしれないですけど、僕はあれでいいし、あれがいいって思っちゃいました。個人的にもすごく好きなので。

 

Red Velvet - Russian Roulette (pìccolo Club Edit)

 

T:音楽業界の人に対して思うのは、たとえばそういう人たちのを聞いて、いいと思うなら、そっちに金払ってよって思うんですよ。もちろん、ネームバリューとかの問題もあるんでしょうけど、宇多田ヒカルくらいじゃなければいくらでもなんとかなるんじゃないの?って思うんですよね。

T:これは別にTaku TakahashiのRemixを否定しているわけではないんですよ。好きなのは前提で、個人的好みとしては、もうちょいカマして欲しかったなという気持ちはありますけど。

K:もう一個カマしてほしかったというのはありつつ、こういうクオリティの高いプロダクトがあるのは大事ですからね。

T:だったら、他にも回してもらえませんかって気持ちなんですよね。それは俺ら自身が作るって意味じゃなくて、もっと他にもおもしろいプロデューサーいますよってことで。

K:才能はゴロゴロ転がってますからね。

T:そういう意味で繋がるかはちょっと微妙ですが、最後にここで言及しておくとしたら、おそらくこれはもとから公式で提供予定だったものがそのままリリースされたんだろうなと思いつつ、ピーナッツくん - グミ超うめぇ(PAS TASTA Remix)には触れておきたいですね。おそらく、今年今後出るRemixを入れても、個人的1位が揺らぐことはまずないと思います。

 

ピーナッツくん - グミ超うめぇ(PAS TASTA Remix)

 

K:完成されてると。

T:完成というか、ここまでの内容に何かしら覚えがある人は間違いなくぶっ刺さった作品だと思いますし、Aメロ以降のJersey Clubだけでなくてバイレファンキ的なものも入って、サンプルガチャガチャで音数もめちゃくちゃ多いですけど、それが全て刺さってしまう。

K:あれどう分業してるんですかね。

T:誰が各パートをやってるのかわかんないですけど、とにかくすごい。ああいうのをもっと僕は聞きたいんですよね。あれが実際回ってるかどうかは確認してないですけど、回ってるんじゃないのって思ってるし。

K:回っててほしいですよね。

T:いや、ほんとに。

K:そういう意味では、今回の宇多田ヒカルのRemixもガンガン回して数字出るってことが伝わる感じだといいですよね、次に同じ感じで繋がっていくというか。

T:そうなると、みなさん眠らせていたプロジェクトファイルを掘り起こして、金儲けしてもらえばいいんじゃないかと思うわけですよ。だって、Future FunkでBMWが買えてるわけですから。プロデューサー側は金儲けのためにやってるわけじゃないってのもわかるんですけど、そっちで金儲けて、好きなことやるってものありなんじゃないすかねとは思います。いまどきそれを「セルアウト」とかいうやつはいないでしょ。音楽業界の困っている皆様は、もう一度Soundcloudを確認してみようということで。(笑)

T:僕らが作れないにしても、聞かれたら紹介とか推薦とか、この辺に声かければとかは好き勝手言うし(笑)

K:現実的にはそれこそTREKKIE TRAXとかに今なら連絡が行くんだと思いますけど。

T:実際、原曲というかRemixでないものでいうと、Cola Splash - Cola Splashはボーカルとかはないですけど、Jersey Club的な名曲だと思いますし、日本のレーベルでそういう文脈ならまずはTREKKIE TRAXなのかなというのはありますよね。実際たくさん来てるのかもしれません。知りませんけどね、例によって。

 

Cola Splash - Cola Splash

 

あとは、個人でやってる人だってたくさんいますから。それこそ勝手に名前出すのは失礼かもしれないですけど、T5UMUT5UMUさんがプロデューサーとしてオーバーグラウンドで活躍していないのは日本とか音楽業界にとってもったいないなと個人的には思ってしまいますね。

 

t5umut5umu.bandcamp.com

 

K:もちろん、本人がやりたいことをやれているので今の状態が適切という可能性もありますけど、そのうえでも見てみたいということですよね。

T:断っているのかもしれないですけど、たくさんいろんな連絡が来ている現状だといいなと勝手に思っていたりもします。

T:まあ、時間も迫っているのでまとめると、Bootlegは金にできないのか、あるいは、金になることを目的としていなかったものが金になることのおもしろさ、愉快さを見つけていきたいよねってことですよね。

K:前例もできましたからね、実際。ここからどうなるかですよね。

T:まあ。前例にみんなで乗っていこうと。

K:でも、実際マイナスなんてないですからね、座組的には。

T:ほんとうにそうだと僕自身は思っていて、実際hirihiri君なんてパーティーに昔呼ばせていただいたときは、あんまりお金ないっぽかったけど、今やCMやってるし、当然のように食えてるでしょ、おそらく。

K:余裕で食えてるでしょ。

T:夢あるなと。好きであんな風にいっぱい作って飯食えてる。そういう人を増やしたいですよね、別に我々は何の立場でもないですけど(笑)まあ、そうなると単純にいい曲たくさん聞けるし。

K:そうですね、そうなるといいですね。

T:ということで、今日の話はこの辺で終わりです。

T・K:ありがとうございました。

 

注:文章全般を通しての「敬称」が入っている、入っていない人の線引きについては、「タモリ」を「タモリさん」とは一般人は呼ばないみたいなことだと思ってください。最近はなんでもかんでも「敬称」をつける人がいますが、あれはかなり違和感が個人的にはあるので、距離感で使い分けているつもりです。

 

編集後記:書き起こし記事は初めてだったので、収録から結局いろいろあって公開までに1カ月かかってしまったのは良くなかったと思いつつ、ある程度世間の熱が冷めてからの記事としては、素人が出すのにはちょうどいい期間だった気がしている。振り返れば、話題を持ってきた自分がめちゃくちゃな話の展開にしてしまっているなという反省もありつつ、後半はそこそこマシな話になったのではという思いもあり、なんかあったらまたやれたらいいなという所存です。

 

その他の参考音源:いろいろ取り上げたい音源はあったのですが、以下いくつか時間の関係上あげられなかったもので、おもしろかったもの、個人的に好きなものを書いて終わりにします。

 

・harmoe - きまぐれチクタック ( 作曲:Tomggg、作詞:ボンジュール鈴木

 

 

・ナナヲアカリ - チューイングラブ feat.Sou ( Taku Inoue Remix )

 

 

椎名林檎 - 長く短い祭 (wag¥ edit )

 

 

・ilovenightcore x 돈을 벌려고 - PRSMJRSYNGHTCR

 

 

・Jay Park x Hoodboi - All I Wanna Do (Sammy Seagull Remix)

 

 

m-flo loves CHEMISTRY - Astrosexy (mondaystudio remix)

 

 

・Trippy Turtle - Only Wanna Give It To You

 

 

ご感想やご意見もお待ちしております。俺にもしゃべらせろなどという奇特な方もお待ちしております。